公認心理師 2018-132

2018年12月20日木曜日

注意欠如多動症/注意欠如多動性障害〈AD/HD〉の併存障害について、正しいものを2つ選ぶ問題です。

こちらは診断基準を問うものではなく、「併存障害」に関する問題ということで、より実践的な印象を受けますね。
エビデンスが見つけられたところは楽だったのですが、見つからないところは解説が難しかったです。



解答のポイント

ADHDと併存しやすい障害を把握していること。
ADHDの併存障害を生じさせやすい心理状況を理解していること。



選択肢の解説


『①環境調整と薬物療法とを考慮する』

ADHDの多動や衝動性、集中困難は何らかの生物学的な原因に環境要因、心理社会的要因が加わってもたらされていると考えられています。
治療としても、家族や学校に向けての教育的・療育的支援、本人に対しての社会生活技能訓練、行動療法的アプローチ、薬物療法があります。

周囲に対して、彼らの不注意、多動、衝動性はわざとではないなどといった理解を得ることが重要になります。
その上で、子どもに対してできるだけわかりやすく短い指示を与えること、言葉だけではなく目で見てわかるように指示を出したりアドバイスすること、何かあったときは乱暴する前に大人に相談する練習をすること、などを伝えていきます。

またコンサータやストラテラなどによる薬物療法も実施されております。

以上より、選択肢①は正しいと判断できます。
余談ですが、この選択肢は「ADHDの併存障害」についてを問うものではなく、「ADHDの治療」について問うものになっているような気がしますね…。



『②成人期にしばしばうつ病を併存する』

APAが調査したADHDの併存障害は以下の通りです。
  • 反抗挑戦性障害:〜50%
  • 素行障害:15〜20%
  • 学習障害:10〜25%
  • 不安障害:20〜25%
  • 気分障害:15〜20%
そして他の研究における、気分障害の内訳では、大うつ病(18.6%)、気分変調性障害(12.8%)、躁うつ病(19.4%)とされています。

以上より、選択肢②は正しいと判断できます。



『③養育環境は併存障害の発症に関係しない』

杉山登志朗先生は、ADHDのある子どもの多動、衝動性、不注意に対して躾で何とかしようとした場合、虐待が生じやすいとしています。
ただし、元々発達障害があったから虐待が生じたのか、虐待の結果発達障害のような症状を呈するようになったのかは見分けられないことも多いです。

いずれにせよ養育環境が不適切なものであれば、ADHDと関連して反抗挑戦性障害、解離性障害、心的外傷後ストレス障害、気分障害、双極性障害などと診断されるような状態を呈しやすくなります

虐待環境では、感情コントロールが困難であること、対人関係上の複雑な反応があることなどが認められており、これらが社会適応を難しくしていることも少なくありません。

以上より、選択肢③は誤りと判断できます。



『④自尊感情の高低は併存障害の発症に関係しない』

不注意や多動によって、幼い頃から注意されることが続くと、当然ながら自尊感情が低くなりがちです。
特に不注意は失敗体験を招きやすく、これが続くことで、宿題などの根気を要する課題を避けたり拒んだりするようになります。
学習への遠ざかりは更なる多動を招きやすくするだけでなく、反抗挑戦性障害に代表されるような非行傾向の出現、学校からのエスケープなども生じやすくさせます

自尊感情の低下は対人関係上の問題も招きます。
自身を否定的に捉えている子ども(子どもに限りませんが)は、周囲は自分のことを否定的に捉えていると思いがちです。
すなわち「自分への評価が、他者が自身に向けている評価とごっちゃになってしまう」ということが起こります。
(こうした傾向は、投影性同一視などの防衛機制とも絡むところですね)

こうした周囲に対する反応は、様々な反応を生じさせます。
  • 他者を遠ざける
  • 非常に被害的な態度を取る
  • 感情の抑えこみを行うことで、感情面の不調を生じさせる
  • 周囲に対して攻撃的になる
自信の無さが抑うつ的に見られる場合もあるでしょうが、感情的な揺らぎは双極性障害の病態を示すこともあります。
こうした傾向が元々のADHDという特性と相まって、非常に際立って見えるわけです。

以上より、選択肢④は誤りと判断できます。



『⑤児童期に反抗挑戦性障害を併存することは少ない』

反抗挑戦性障害のリスクファクターとして、高率に併存するADHDが挙げられます。
両者の密接な関係は多くの研究者によって指摘されております。

ADHD児童には何らかの併存症があるとされており、日本のある調査によると以下の通りです。
  • 反抗挑戦性障害:50%
  • 素行障害:10%
  • 不安障害:18%
  • 適応障害:5%
  • 気分障害:3%
  • 排泄障害:20%
  • チック障害:10%
  • 学習障害:26%
上記のように、反抗挑戦性障害との併存はかなり多いとされております。

杉山登志郎先生の「児童虐待という第四の発達障害」という概念があります。
杉山先生の考えは、いわゆるマルトリートメントによってADHDと類似する症状が呈されるということを示しているということなので、本問の「ADHDの併存障害」を選ぶ際に活用して良い知見であるかは判断が難しいところです。

杉山先生は、マルトリートメントを背景としたADHDでは、非行が多いことなどを指摘しております
事実、反抗挑戦性障害は、過度に制限や要求が多い養育、不十分な親のしつけや監督、制限と自立をめぐる適切に解決されない親子間の葛藤などが要因としてあげられています。

ADHDであることは、養育を難しくしますし、その点で上記のような養育が他の子どもよりも多くなるという見方も可能です。
いずれにせよ、選択肢⑤の内容は誤りと判断することができます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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