認知症に絡めた問題は、他にも出ていますね。
脳血管型、アルツハイマー型、レビー小体型、前頭側頭型などの違いをしっかりと把握しておくことが求められます。
解答のポイント
認知症のタイプごとの特徴を把握していること。特に、特徴的な症状や他の認知症との鑑別点を知っていると良い。
選択肢の解説
『①Lewy小体型認知症は幻視を伴うことが特徴である』
レビー小体型認知症の最も重要な特徴は、診断に必須である認知症、変動する認知機能、幻視、パーキンソニズムとされています。さらに、抗精神病薬に対する感受性、うつ症状、妄想、アパシー、嗅覚障害、幻視以外の幻覚などの精神症状、反復性の転倒と失神、一過性の意識消失などの症候があります。
構成された具体的な内容の繰り返される幻視は中核的特徴です。
典型的な幻視は人物、小動物、虫が多いとされています。
人物は家族や親戚であったり、知らない他人の場合もあります。
小さい子供が多いが、大人であることもあり、一人も複数も、生きている人も死んでいる人もあり得ます。
生き物以外では、光、紐、糸などの要素的な幻視も認められます。
患者は幻視の存在を確信して家族に訴えますが、診察時に確認すると幻視であることを自覚していることもあります。
幻視は色彩がないものが多いですが、ぼんやりとした人影のようなもの、明瞭なもの、動きの有無など様々で、その不安感、恐怖感、無関心など感情的反応も様々です。
レビー小体型認知症の幻視は認知の変動と連動して、注意・覚醒レベルの低下時や夕方など薄暗い時期に起こる傾向があり、せん妄の幻視と鑑別が必要ですが、レビー小体型認知症の幻視は持続性・反復性があることや患者が後に家族や医師に幻視の内容について詳細に説明できる点から区別できます。
以上より、選択肢①は正しいと判断できます。
『②前頭側頭型認知症は運動障害を伴うことが特徴である』
いわゆるピック病とも呼ばれる認知症です。ここでは行動障害型の前頭側頭型認知症の症候について記載していきます。
- 病識の欠如:病初期から認められ、病感すら欠いていることもある。
- 自発性の低下:常同行動や落ち着きのなさと共存して見られることが多い。
- 感情・情動変化:多幸的であることが多いが、焦燥感、不機嫌が目立つ例もある。
- 被影響性の亢進:外的な刺激や内的な欲求に対する被刺激閾値が低下し、その処理が短絡的で、反射的、無反省なものになることが特徴的。
- 脱抑制・我が道を行く:本能の赴くままの行動で、反社会的行為につながることもある。
- 常同行動:ほぼ全例で認められる。
- 転動性の亢進:ある行為を維持できないという症状で、外界の刺激に対して過剰に反応する。
- 食行動の異常:食欲の変化、嗜好の変化、食習慣の変化が見られる。
特に前頭葉障害による自発性低下や無関心を呈する例では、脳血管性認知症の症候と類似しますが、脳画像所見で鑑別可能です。
運動障害については、選択肢③で示されている「脳血管性認知症」で特徴的と考えられます。
以上より、選択肢②は誤りと判断できます。
『③血管性認知症では歩行障害と尿失禁が早期から出現する』
脳血管性認知症では、障害される脳の部位が多様であるため、様々な症候を示します。その中でも、「認知症 神経心理学的アプローチ」によると、認知症発症早期からの運動障害と尿失禁は血管性認知症の特徴とされています。
NINDS-AIRENによる脳血管性認知症の診断基準の中にある「支持する所見」として以下のように記されております。
- 早期からの歩行障害
- 不安定性と理由のない転倒の増加
- 頻尿、尿意切迫
- 偽性球麻痺
- 人格や気分の変調、無為、抑うつ、感情失禁、精神運動遅滞
『④若年性認知症で最も多いのはAlzheimer型認知症である』
若年性認知症で最も多いのは、脳血管性認知症とされています。こちらは脳血管障害に起因する認知症であり、頭部外傷、感染症、脳腫瘍、変性疾患などが原因となります。
交通事故などによって生じることも多いため、ほかの認知症に比べて若年者が割合として高くなります。
アルツハイマー型認知症は65歳以下の若年型がありますが、やはり年齢が高いほど発症の頻度は高いことは間違いありません。
以上より、選択肢④は誤りと判断できます。
『⑤Alzheimer型認知症の早期には近時記憶の障害が見られない』
アルツハイマー型認知症、特に高齢発症型の初発症状は基本的に近時記憶障害です。日常生活では、聞いたことを忘れる、置き場所を忘れて物を探している、出来事自体を忘れる、必要なときに予定や約束を思い出せない、といった形を取ります。
これらは緩徐に出現・進行するので、当初は、患者の生活を知る周囲の人間に以前と比較しての違和感を与えはするものの、生活上に大きな支障は生じません。
生活上に具体的な支障が生じ、医療機関や相談機関への受診に繋がるのは、早くても2〜3年が経過してからであることが多いです。
上記の点を踏まえて、聴取では「生活に支障が生じるほどではないが、患者の物忘れに周囲が違和感を持ち始めたのはいつ頃からか」と問う必要があるとされています。
なお若年性アルツハイマー型認知症(65歳以下)でも近時記憶障害はありますが、病識が保たれていることがあり、受診が早い場合があります。
このタイプの大きな特徴は、言語障害や視覚認知障害を反映すると思われる臨床症状が高齢発症型よりも早期に出現することです。
以上より、選択肢⑤は誤りと判断できます。
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