公認心理師 2018-126

2018年12月02日日曜日

WHO〈世界保健機関〉によるICF〈国際生活機能分類〉の障害やその支援に関する基本的な考え方について、正しいものを2つ選ぶ問題です。

ICFは、ICIDHに代わり、人間の生活機能及び障害に関する分類法として、2001年のWHO総会にて採択され、多くの国で用いられています。
それまでのICIDHが身体機能の障害による生活機能の障害(社会的不利)を分類するという考え方であったのに対して、ICFでは全体的な健康状態を把握します。





ICFについては、以前の記事で書かせてもらったことがあります。
こちらを参照にしつつ、解説を進めていきます。



解答のポイント

ICFの概要、特に障害の捉え方について把握していること。
ICIDHやICDなど、WHOが開発した「国際分類ファミリー」を把握していること。



選択肢の解説


『①生活機能と障害の状態は、健康状態、環境因子及び個人因子が相互に影響し合う』

ICFにおける障害と生活機能は、健康状態と背景因子との相互作用の帰結とみられています。
ICF では「生活機能」の分類と、それに影響する「背景因子」の分類で構成されています。

「生活機能」は、以下から構成されています。
  1. 心身機能・構造(生物レベル)
    生命の維持に直接つながるもので「心身機能」と「身体構造」に分けられる
    心身機能:手足の動き、視覚・聴覚、内臓、精神等の機能面
    身体構造:指の関節、胃・腸、皮膚等の構造面
  2. 活動(生活レベル)
    一連の動作からなる目的をもった個人が遂行する生活行動であり、日常生活動作以外にも職業的動作、余暇活動も含まれるため、文化的な生活、社会生活に必要な活動すべてを含む。
  3. 参加(人生レベル)
    家庭内での役割を含め、社会的な役割を持って、それを果たすことである。地域組織の中でなんらかの役割をもち、文化的・政治的・宗教的など広い範囲にかかわる。
生活機能の3レベルはそれぞれが単独に存在するのではなく、相互に影響を与え合い、また「健康状態」および「背景因子」からも影響を受けます。
これを示すために ICF のモデル図では、ほとんどすべての要素が双方向の矢印で結ばれています。

「背景因子」は、ICFになって新たに障害に影響するとされたものです。
  1. 環境因子(Environmental Factors):
    人々が生活し、人生を送っている物的な環境や社会的環境、人々の社会的な態度による環境を構成する因子のことです。サービス、制度であり、個人に影響を与えるものを指します(バリアフリーなどもここに含まれる)。
  2. 個人因子(Personal Factors):
    個人の人生や生活の特別な背景であり、健康状態や健康状況以外のその人の特徴からなる。これには性別、人種、年齢、その他の健康状態、体力、ライフスタイル、習慣、生育歴、困難への対処方法、社会的背景、教育歴、職業、全体的な行動様式、過去の経験、性格、個人の心理的資質、その他の特質などが含まれます。
ICFにおける「生きることの全体像」をみるとは、生活機能モデルに立って、生活機能の3つのレベルのどれかに片寄らず、常に生活機能の全体像をみること、その際、3レベル間の相互作用を重視すること、「健康状態」・「環境因子」・「個人因子」の影響を重視することを指します。

以上より、選択肢①は正しいと言えます。



『②生活機能の障害は、身体の機能不全によって能力低下が引き起こされる中で生じる』

ICIDHでは、疾患・変調が機能障害を、機能障害が能力障害を引き起こし、機能障害と能力障害が社会的不利になるという考え方でした。

WHOは、このICIDHをさまざまな地域や健康問題に適用することができるように改訂し、2001年にICFを発表しました。
ICFはこれらの環境因子という観点を加え、例えば、バリアフリー等の環境を評価できるように構成されています。

よって、選択肢②の内容はICIDHのものと言えます。
以上より、選択肢②は誤りと言えます。



『③障害とは、心身機能、身体構造及び活動で構成される生活機能に支障がある状態である』

ICFでは、それまでICIDHで使用されていた用語を中立的な表現に変更しました。
  • 機能障害  → 心身機能と身体構造
  • 能力障害  → 活動
  • 社会的不利 → 参加

詳しく述べると以下のようになります。
  1. 心身機能・構造(生物レベル)
    生命の維持に直接つながるもので「心身機能」と「身体構造」に分けられる
    心身機能:手足の動き、視覚・聴覚、内臓、精神等の機能面
    身体構造:指の関節、胃・腸、皮膚等の構造面
  2. 活動(生活レベル)
    一連の動作からなる目的をもった個人が遂行する生活行動であり、日常生活動作以外にも職業的動作、余暇活動も含まれるため、文化的な生活、社会生活に必要な活動すべてを含む。
  3. 参加(人生レベル)
    家庭内での役割を含め、社会的な役割を持って、それを果たすことである。地域組織の中でなんらかの役割をもち、文化的・政治的・宗教的など広い範囲にかかわる。
ICFでは、心身機能と身体構造、活動、参加のいずれかに問題を抱える状態を障害と捉えています

選択肢にある「生活機能」とは、「心身機能・構造、活動、参加の全てを含む包括用語」と言い表すことができます(上記の図がそのモデルということですね)。

以上より、選択肢③の内容は「生活機能モデル」の「参加」が抜け落ちております。
よって、選択肢③は誤りと判断できます。



『④障害とは、身体的、精神的又は知的機能のいずれかが一般の水準に達しない状態が継続することである』

ICFにおいて「障害」という言葉は、機能障害(構造障害を含む)、活動制限、参加制約の全てを含む包括用語として用いられています。

選択肢にあるような「一般の水準に達しない状態」を指すのではなく、障害を主として社会が作り出した問題と捉えて、心身機能と身体構造、活動、参加のいずれかの一つあるいは複数のレベルで生活機能の不全を含む状態を障害と捉えています。

もちろん、ICFにおいても「第2レベルまでの分類」として「知的機能」を含めています。
しかし、あくまでも「一定の水準に達しない」ことを障害とすることはありません。

以上より、選択肢④は誤りと言えます。



『⑤障害への心理的支援においては、診断名ではなく、生活の中での困難さに焦点を当てることが重要である』

ICFの中では、障害を主として社会が作り出した問題という視点で見ています。

すでに述べたとおり、ICFでは、心身機能と身体構造、活動、参加のいずれかの一つあるいは複数のレベルで生活機能の不全を含む状態を指します。
それは、機能障害、活動制限、参加制約とされ、これらをひっくるめて障害とします。
特に活動制限、参加制約などは、生活の中での困難さに焦点を当てたものです。

ICD-10は、病気、変調やその他の健康状態の「診断」を提供し、それによる情報はICFによる生活機能についての付加情報によってより豊かなものとなるとされています。
診断に生活機能を付け加えることによって、人々や集団の健康に関するより広範かつ有意義な像が提供されることになり、これは意思決定のために用いることができるわけです。

以上より、選択肢⑤は正しいと言えます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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