公認心理師 2018-116

2018年12月15日土曜日

エビデンスベイスト・アプローチについて、正しいものを1つ選ぶ問題です。

1990年代に医療現場においてエビデンスにもとづく医療という運動が起こりました。
これまでの医師個人の経験と勘に頼っていたことを反省し、エビデンスに基づいて医療を行っていこうという運動です。

この動きは臨床心理学にも大きな影響を与えており、ここから「エビデンスにもとづく臨床心理学」といった考えが出てきています。

ちなみに、医療政策研究機構(現在の医療研究・品質調査機構)設立から10年後の1997年に医学者Sackettによって「Evidence-Based MEDICINE」が出版されました。
定義は「心理学におけるエビデンスに基づく実践は、患者の特性・文化・選択に即して、入手可能な最善のリサーチを臨床技能と統合する」とされています。

エビデンスベイスト・アプローチは、科学的根拠を重視した方法と捉えられることが多いと思われます。
しかし、実際はこうした「科学的根拠」のみならず、「臨床上の経験・技能」および「患者の価値感」なども含まれます。

これらの点を踏まえつつ、各選択肢の検証を行っていきます。



解答のポイント

エビデンスベイスト・アプローチ、特に心理療法の治療効果を数量的に表す方法について把握していること。



選択肢の解説


『①事例研究はエビデンスとして採用しない』
『②介入効果のエビデンスは査定法の開発には用いない』
『③対照試験は一事例実験よりも結果にバイアスがかかる』

心理療法の治療効果を数量的に表す方法について、研究者はさまざまな工夫をしてきました。
それらは以下の4つにまとめられています。

1.客観的な基準を用いて診断すること
どのような障害を対象としたのかによって、心理療法の効果は大きく変わってきます。
このためにDSMやICDなどの診断基準が用いられるようになりました。


2.精神症状を測定する際に、主観的な指標ではなく客観的な指標を用いること
治療効果を量的に測るために、診断面接基準や症状評価尺度、症状評価質問紙などが用いられるようになりました。
このような量的な指標を用いて、治療経過を客観的に把握します。

多くの心理検査は、信頼性・妥当性などを高め、標準化されております。
エビデンスに基づく臨床心理学では、それまでのエビデンスの蓄積であるデータベースを用いつつ支援を行っていきます
そして、同時にこのデータベースを作る作業も行っていきます。
すなわち、介入効果のエビデンス・データベースを用いつつ、心理療法や心理査定の検証を行うことがなされ、そこで得た知見がまたデータベースとして蓄積されていきます

この点より、選択肢②は誤りと判断できます。


3.治療効果の因果関係を確定できる方法を用いること
こちらには以下の4つの段階があるとされています。
  1. 事例研究
    最も基本的なレベル。1人の事例もしくは同様の心理療法を行った複数事例についてまとめた治療の報告を指す
    治療効果の明示のみでなく、心理療法の過程や事例の変化を詳しく記述・考察することを目的としているものが多い。
  2. 単一事例実験:
    治療効果研究の観点から事例研究より一歩進めた方法として、単一事例実験がある。
    これは1人の事例について、非治療期と治療期をつくり、非治療期のベースラインと比べて、治療期にどの程度ターゲットとなる心理的な問題が改善するのかという視点から、治療効果を調べるもの(いわゆるABデザインのこと)。
  3. 対照試験:
    単一事例実験よりも更に客観的に調べるために必要な手続き
    治療しない「対照群」を別に設けて、それと治療群を比べる方法を指す。
    その治療法が実施するものに値するものなのかどうかは、対照群を設けなければ客観的に判定できない
  4. 無作為割付対照試験:
    最も厳密な方法であり、対象者を治療群と対照群に割り付けるのを無作為に行う。
    治療群と対照群への振り分けが作為的に行われてしまうと、研究する側の都合で研究効果が課題に評価される可能性があるので、割付を無作為に行うのである。
これらは以下のようにまとめられます。


以上より、事例研究は治療効果の因果関係を確定できる方法の一つとして挙げられております
よって、選択肢①は誤りと判断できます。

更に、対照試験は一事例実験よりも客観性が担保された手続きとして示されております
よって、選択肢③は誤りと判断できます。


4.効果量を算出すること
心理療法の効果を客観的に表すために、以下の式によって効果量を求めます。
効果量=(治療群の平均値-対照群の平均値)/対照群の標準偏差

この式の分子は、治療によってどれだけ平均値が変化したかを表しています。
効果量が大きいほど、治療の効果が高いことを示します。
この効果量という指標が考えられたことによって、心理療法の効果を量的に表すことができるようになりました。

効果量については、以下の選択肢④の解説に続きます。



『④メタ分析では同じ研究課題について複数の研究結果を統合して解析する』

効果量は、どのような症状尺度でも算出でき、論文に治療群と対照群の平均値と標準偏差が記載されていれば算出できます。
そこで、過去の論文に発表されたデータを、統計的手法を用いて統合する方法が開発されました。
この方法がメタ分析です。

メタ分析を用いて、スミス&グラスは心理療法に効果があることを示しました。
一方で、質が悪い研究による歪みが指摘されたため、シャロピらが質の高い研究を厳選してメタ分析を行い、やはり心理療法の効果が確かめられました。

メタ分析の利点は、心理療法に関わるさまざまな事柄を数量的に比較できる点にあります。
この点を活かし、その後のメタ分析では、心理療法全体ではなく、個々の技法ごと、個々の症状ごとに行われるようになりました

こうした研究の結果、症状と治療技法の交互作用が明らかになり、クライエントの症状によって技法を使い分けるべきであるという主張が出てきました。
こうした主張を推し進めたのが「心理療法のガイドライン」です。
1993年に「経験に裏付けられた治療」というリストが公表され、十分に確立された治療法18種と、おそらく効果がある治療法7種が選び出されました。

以上より、選択肢④は正しいと判断できます。

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About Me

小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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