公認心理師 2018-90

2018年11月10日土曜日

ストレンジ・シチュエーション法によるアタッチメントのタイプ分類(A:回避型、B:安定型、C:抵抗/アンビバレント型、D:無秩序・無方向型)に関する説明として、最も適切なものを1つ選ぶ問題です。

各型の説明を記述してどれが何型かを当てるような、単純な問題は出題されませんでしたね。
より突っ込んだ内容になっていたと思います。


エインズワースは、ボウルビィの共同研究者の一人で、生後12~18か月の子どもの愛着の安定性を評価する実験室用の手続きとしてストレンジ・シチュエーション法を考案しました。
以下のような手続きにおいて赤ちゃんは観察窓から、活動水準、遊びへの関わり、泣くなどの苦痛の程度、母親への接近と母親の注意を得ようとする試み、見知らぬ女性への接近や相互作用への意思などを記録されました。
  1. 母親と乳児が実験的に仮設された部屋に入る。母親は乳児をおもちゃが並べられた床に置き、部屋の反対側に離れて座る。
  2. 見知らぬ女性が部屋に入ってきて、1分間静かに座る。そして1分間母親と会話する。その後その女性は乳児とおもちゃ遊びを試みる。
  3. 母親は不意に部屋から出ていく。乳児が泣かないなら、見知らぬ女性は再び静かに座り直す。もし気が動転して泣いたなら、あやしてなだめるようにする。
  4. 母親が部屋に戻ってきて乳児と遊ぶ。その間に見知らぬ女性は退室する。
  5. 母親は再び退室する。その時点で乳児は独りで部屋に取り残されることになる。
  6. 見知らぬ女性が再び戻ってくる。もし赤ちゃんが動転しているなら、あやしてなだめるようにする。
  7. 母親が再び部屋に入り、見知らぬ女性は退室する。
こうした手続きに沿って得られた記録から、上記のようなタイプ分類が行われたわけです。
各タイプの子どもの特徴および養育者のパターンを踏まえつつ、選択肢の検証を行っていきます。




解答のポイント

ストレンジ・シチュエーションの分類法について把握していること。
愛着の各タイプの特徴と、その養育者が示す態度を理解していること。



選択肢の解説


『①Aタイプの養育者は、子どもに対して虐待など不適切な関わりをしていることが多い』

研究者たちは、子どもに見られる愛着の違いを説明するために、主たる養育者、すなわち母親のとる行動に多くの関心を寄せました。
その主なものとして、子どもの欲求に対する養育者の「応答感受性」が安定した愛着を生み出しているという知見があります。

安定型の愛着を持つ子どもの母親は、ふつう子どもが泣くとすぐに反応し、子どもを抱き上げ、愛情深く行動します。
また、自分たちの応答を子どもの欲求に密接に合わせようとします
例えば、授乳において、乳児が示す信号を読み取り、いつ授乳し始め、いつ終えるべきかを決め、食べ物の好みに注意を払います。
いわゆるマザリングもこの中に含まれているでしょう。

一方で、AタイプやCタイプのような愛着不安定型を示す子どもの母親は、子どもからの信号に対して応じるというよりも、母親自身の思いや気分に基づいて反応する傾向が強いとされています。
子どもの泣き声に注意を払って反応するのは、母親が抱きたいと思っている場合に限られており、それ以外では泣き声を無視してしまいます。

特にAタイプでは、全般的に子どもの働きかけに拒否的にふるまうことが多く、他のタイプの養育者と比較して子どもと対面しても微笑むことや身体接触することが少ないとされています。
子どもが苦痛を示すと、それを嫌がって子どもを遠ざけてしまうような場合もあります。
また、子どもの行動を強く統制しようとする働きかけが多く見受けられます。

Aタイプ~Cタイプのいずれにも当てはまらない子どもが見られ、いわゆるDタイプ(Main&Solomon,1986)が加わりました。
このタイプは、不適切に養育された子どもや両親が精神障害の治療を受けている家庭の子どもに高い割合で出現しています。
何らかの問題を抱えた臨床群や社会的経済的地位の低いグループで増えるという知見もあります。

以上より、選択肢①における養育者の説明は、AタイプではなくDタイプの養育者のパターンの記述となっています。
よって、選択肢①は不適切と判断できます。



『②AタイプとCタイプの子どもは、再会場面で感情が元どおりに回復せず、怒りの感情を表すことがある』

Aタイプ(回避型)の子どもは、再開場面において母親に対して相互作用することを明らかに回避する傾向があります。
母親を無視する場合もあります。

また相互作用しようという試みと、それを回避しようとする試みの混合を示す子どももいました。
回避する子どもは、母親が部屋に居てもほとんど注意を払うことなく、母親が出ていこうとしても苦痛を感じているようにも見えません。
仮に苦痛を示しても、見知らぬ女性によって容易になだめることが可能です。

一方、Cタイプ(抵抗/アンビバレント型)は、再会場面において母親に対して抵抗を示します
この子どもたちは、身体接触を求めることと抵抗とを同時に示します
抱き上げようとすると泣き出し、下ろそうとすると怒ってしがみつくなどです。
活動はとても受動的で、母親が戻ってくると母親を求めて泣き出しますが、近づこうとはせず、母親が近づこうとすると抵抗を示します。

こうしたCタイプの反応は、実は細かな日常場面で散見されます。
例えば、「お母さんの膝の上に乗ってくるが、乗り方がドンッという感じ」などです。
甘えと怒りが入り混じった反応ですね。
私の印象では、過去の甘えの傷つき(甘えようとして受け容れてもらえなかった怒り)が、現在の甘えようとする欲求が生じた瞬間に引き出され、結果として甘えと怒りが入り混じった行為になると感じています。

以上より、選択肢②の内容はCタイプのパターンに該当しますが、Aタイプには該当しません
よって、選択肢②は不適切な内容と判断できます。



『③BタイプとCタイプの子どもは、分離場面で強く泣くなどの苦痛を表出する』

Bタイプの子どもは、母親が戻ってくると母親との相互作用を求めます。
セッション全体において、母親から離れられず、母親が出ていこうとすると激しい苦痛を示した子どももおります

Cタイプの子どもは、再会時には親に強く身体接触を求めていくが、その一方で親に対して怒りを示し、また激しくたたいたりすることが有名です。
このタイプでは分離場面においても、非常に強い不安や混乱を示すとされています。

よって、BタイプおよびCタイプの分離場面の反応として、「強く泣くなどの苦痛を表出する」ということはあり得ます。
一方で、「BタイプとCタイプでは、分離場面で泣くことがあってもその質が違うのではないか」「だからこちらを併記し、同様の反応として扱うことはおかしい」という反論があり得ると思います。

この疑問に答えるにあたって重要なのが、このストレンジ・シチュエーション法における愛着のタイプ分類は、「主として母親が退室した時の子どもの苦痛に基づくものではなく、母親が戻ってきたときに子どもがどのように反応するかに基づいて分類されている」ということです。
いくつかの研究により、子どもの気質は「出ていくときのパターン」を予測するものであり、「再会時のパターン」を予測するものではないとされています。

すなわち、分離場面におけるパターンは愛着のタイプを直接的に示すというよりも、子ども自身の気質を示す割合が強いと言え、Bタイプの子どもであっても選択肢③にある「分離場面で強く泣く」という現象が生じます。
当然、そういった子どもは「扱いにくい子ども」とされるため、母親の対処パターンがネガティブな方向に変化する可能性は否めませんが、本選択肢の判断にそこまで汲み上げる必要はないと言えるでしょう。

以上より、この辺の愛着に与える影響はさておき、本選択肢の内容には瑕疵がないと判断できます。
よって、選択肢③が適切と判断することが可能です。



『④Cタイプの養育者は、子どもに対して拒絶的にふるまうことが多い』

先述したように、AタイプやCタイプのような愛着不安定型を示す乳児の母親は、乳児からの信号に対して応じるというよりも、母親自身の思いや気分に基づいて反応する傾向が強いとされています。
そしてAタイプの養育者は、全般的に子どもの働きかけに拒否的にふるまうことが多く、他のタイプの養育者と比較して子どもと対面しても微笑むことや身体接触することが少ないとされています

特にCタイプの養育者の場合、子どもが送出してくる各種アタッチメントのシグナルに対する敏感さが相対的に低く、子どもの行動や感情状態を適切に調整することがやや不得手とされています。
子どもとの間で肯定的な相互交渉を持つことも少なくはないが、それは子どもの欲求に応じたものというよりも養育者の気分や都合に合わせたものであることが相対的に多くなります
結果的に、子どもが同じことをしても、それに対する反応が一貫性を欠いたり、応答のタイミングが微妙にずれたりすることが多くなります

以上より、選択肢④の内容は、CタイプではなくAタイプの養育者の説明と考えることができます。
よって、選択肢④は不適切と判断できます。



『⑤Dタイプの養育者は、子どものシグナルに養育者自身の都合で応答するなど一貫性を欠く傾向がある』

先述の通り、Dタイプの子どもは、不適切に養育された乳児や両親が精神障害の治療を受けている家庭の乳児に高い割合で出現しています。
何らかの問題を抱えた臨床群や社会的経済的地位の低いグループで増えるという知見もあります。

このタイプの子どもは、突然のすくみ、顔を背けて親に接近するなど、不可解な行動パターンや本来は両立しない行動が同時に活性化され、観察者に個々の行動がバラバラで組織立っていない印象を与えます。

こうしたパターンを作り上げる養育者の態度の背景には、養育者自身が心的外傷を有していることが多く、日常生活場面において突発的にその記憶にとりつかれ、自らおびえまた混乱することがあるとされています。

フレイバーグは、母親が乳児と2人きりでいる時に、母親を不意に襲う不安、恐怖、イライラ、嫌悪感などを示す現象を「赤ちゃん部屋のおばけ」と名付けました。
この現象は、泣き続ける乳児を母親が無視する瞬間、その母親に自分の親から無視された辛い思い出がこみ上げてくるためと説明されています。

虐待をしてしまう母親の中には、赤ちゃんが言うことをきかなかったときに「お前まで私をバカにするのか」と叫ぶということも見られます。
どのような体験を背景にしているかは個々人で多少異なるでしょうが、子どもを目の前にした時に過去の傷つきが賦活されるという現象が生じることはかなりあり得ることでしょう。

当然、こうした背景のある養育者は、子どもといる場で子どもを脅かす行動をしてしまいがちです(たとえば、子どもの泣き叫びが、親を呼び寄せる機能を果たすのではなく、親に攻撃を向けてくるように感じつられたり、挑戦的な態度として受け取られたりしてしまうことも生じるため)
その養育システムは無効なものとなっており、子どもとの関係は混沌とし、役割が逆転してしまうこともあります。

一方で、AタイプやCタイプのような愛着不安定型を示す乳児の母親は、乳児からの信号に対して応じるというよりも、母親自身の思いや気分に基づいて反応する傾向が強いとされています。
乳児の泣き声に注意を払って反応するのは、母親が抱きたいと思っている場合に限られており、それ以外では泣き声を無視してしまいます。

以上より、選択肢⑤の内容は、DタイプではなくAもしくはCタイプの養育者の説明と考えられます。
よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
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