公認心理師 2018-85

2018年11月05日月曜日

初期のコミュニケーションと言語の発達について、正しいものを1つ選ぶ問題です。
言語発達における基本的事項について問うています。

解説を書くにあたって、以下の書籍に多くを拠りました。

「子どものための精神医学 滝川一廣先生」

「自閉症とこどもの心の研究 黒川新二先生」

この2冊は何度も読み返しています。
試験勉強という枠を大きく超え、臨床実践で非常に役立っております。




解答のポイント

言語発達の経過で生じる基本的事項を理解していること。
啼泣→クーイング→バブリング→一語文…などの流れと、それぞれの現象の意味について把握していること。



選択肢の解説


『①発達初期に出現する語彙は、動詞や形容詞が名詞よりも多い』

言葉は「一語文」から始まります。
事物にはそれぞれ呼び名があることを理解した時にはじめて「一語文」が可能となります
自身の身体感覚をもって(ピアジェの感覚運動期)見たり触れたりしたものの呼び名から始まるとされ、文法的には「名詞」(ワンワン:イヌ)になります。

こうした事物に名称があることを理解することから、実体的な言語表現が先に行われ(すなわち名詞が先んじて生じ)、次いで動きなどの実体的でないものにも名称があることが理解されると「動詞」(オッキ:起きる)や「形容詞」(オイチ:おいしい)が生じるようになります。
こうした「動詞」や「形容詞」の出現が「二語文」を可能にしていきます。

更に「代名詞」の出現や使いこなしによって、相手の側に立って物事を見る(脱中心化)ということを可能にしていきます。

この辺については黒川新二先生の著作に詳しく示されています。
こちらは非常に知性的に論が展開されており、個人的にはとてもおススメです。

以上のように、選択肢①の内容は誤りと判断できます。



『②語彙の増加は、初語の出現から就学まで概ね均質なスピードで進む』

語彙の増加については、ある時点で急速に進むことが示されています。
一般に12か月~18カ月で単語が出始め、18か月までに150語くらいまで理解するようになるとされています。

12か月~24カ月では「二語文」を使用するようになり、24か月~36カ月では文法形成段階となります。
語彙の増加がいちじるしい時期であり、2歳では270語、3歳では895語まで増えるとされています。

36か月~54カ月は文法発達段階であり、複数形、過去時制、否定形、疑問形などの広範な文法形式が可能です。
それ以降は、真の意思疎通の段階となります。

上記の通り、語彙は1歳~3歳にかけて爆発的に増加する傾向があり、語彙爆発などとも呼ばれます
よって、選択肢の内容は誤りと判断できます。



『③指さしは、リーチングなどとともに生後6か月頃から頻繁に観察されるようになる』

リーチングは生後6か月頃からみられる目の前にある物に触れようとすることを指します。
興味関心の現われでもあり、目で見た物の形や距離感などの視覚情報と、手で触ったときの感覚情報とを脳の中で統合する作業(目と手の協応)をしているとされています。

指さしは8カ月~10か月を過ぎると生じるようになります。
指さしは、同じ対象へ一緒に関心を向ける「共同注意」に、その対象を指でさすという動作が先行するようになったものを言います。

言語発達の研究において指さしは重視されており、それは有意味言語の始まりに必ず先んじて見られる現象とされるためです。
滝川一廣先生(2017)は、以下の3つの理由から指差しが言語発達の歩みのチェックポイントとして重視されてきたと述べておられます。
  1. 相手への伝達を意図した明らかな「表現行為」とみなせること。
  2. 指さしでは「指さす人-指された対象-それを見る人」という、いわゆる「三項関係」が形成され、「話し手-話の内容-聞き手」という言語コミュニケーションの祖型とみなせること。
  3. 事実、指さしがみられない子どもでは、言語発達がしばしば大きくおくれること。
以上のように、指さしとリーチングでは、生じる時期や内包する意味に大きな違いがあると言えます
よって、選択肢③は誤りと判断できます。




『④生後9~10か月頃からみられる、対象に対する注意を他者と共有する行動を共同注意と呼ぶ』

養育者が乳児が注視しているものに視線を向けること、そしてそれを重ねていくことで乳児も養育者の視線を辿って注意を向けるようになります。
これは互いが興味関心を持っているものを共有するという現象であり、発達心理学において「共同注意」と呼ばれています

その上に先に述べた、指さしや言葉が入ってくることで、物の名前などの学習場面につながっていきます。

こうした共同注意は概ね9か月前後に始まるとされており、社会性の発達に大きな影響を及ぼすとされています。

以上より、選択肢④の内容は正しいと判断できます。



『⑤クーイングとは、乳幼児期の後半からみられる「ババババ」などの同じ音を繰り返し発声することをいう』

まず乳児の発声は啼泣で始まります。
この啼泣には、乳児が自身に生じた不快感を自力で取り除くことができないため、養育者の注意を引いて、自分に代わってそれをしてもらうという役割があります。
養育者がこの啼泣に応答しようとすること(マザリング)によって、乳児には能動性(泣くことで周囲に働きかける力を持つという感覚)やエリクソンの言う「基本的信頼感」、身体感覚の分化が生じてきます。

生後1か月~2か月くらいから「アーアー」といった単音節の発声が生じ、このことを「クーイング」と呼びます
啼泣が不快感の発声であるのに対し、こちらは心地よさを示すとされています。

クーイングは生理的な発声であり、例えば聴覚障害があっても生じます。
養育者はこの生理的な発声を「自分に向けられたメッセージ」と感じ応答することで、次のバブリング(喃語)が生じてきます。

生後6か月くらいには規準喃語といわれる複数の音節をもち、「子音+母音」の構造を持つ喃語が現れます。
生後11か月頃になると、非重複喃語といわれ、「ババババ」のような規準喃語から「バダ」「バブ」のように喃語の「子音+母音要素が異なる母音」が反復して表出されるようになります。

クーイングに対して養育者が「自分に向けられたメッセージ」「意味ある言葉」として受け取り、関わりを続けることによってバブリングという「やり取り」の世界が生じてきます。

上記の通り、「ババババ」というのはバブリング(喃語)であり、クーイングではありません
よって、選択肢⑤は誤りと判断できます。

コミュニケーションの第一義的な意味は何と考えるか、についてはさまざまな意見があると思います。
個人的には「これはあなた向けのものだよ」というメッセージが、コミュニケーションの第一要素だと考えております。
誰かに対してコミュニケーションを向けることは「あなたが存在することで行うことができます」という祝福を相手に送ることであると。
この辺をどのように考えているかは、コミュニケーションを通して心理的問題・課題に応答する心理職にとって重要なテーマだろうと思います。

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About Me

小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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