公認心理師 2018-80

2018年11月01日木曜日

認知療法で用いられる手法として、最も適切なものを1つ選ぶ問題です。
認知療法に関する基本的な問題で、比較的解きやすかったのではないかと思われます。

心理療法の概念の中には、単純に「技法」「方法」と呼んでしまってはいけないものがいくつかあります。
例えば、「共感」「受容」などですね。
ここら辺の感度についても高めておくことが重要です。




解答のポイント

各選択肢で示されている用語の基盤となる学派を知っていること。



選択肢の解説


『①ラポール』

心理療法におけるクライエントとセラピストの信頼関係を指します。
個別に行われる実験やテストにおいても、実験者(テスター)と被験者(被検者)との良好な関係を指すこともあります。

こちらは心理療法全般に求められる要素として語られることが多く、認知療法に用いられる「手法」という表現には馴染みません
ラポールを「手法」と考えること自体に違和感を覚えますね。

なお、ラポールというセラピストとクライエントの間に存在する人間関係を前提としない「行動療法」もあります。

以上より、選択肢①は不適切と判断できます。



『②自由連想法』

こちらは精神分析における最も基本的な技法です。
フロイトが催眠法、前額法を経てたどりついた技法で、頭に浮かぶ全てのことがらを批判・選択することなしにそのまま言葉にする方法です。
前額法はクライエントから見られるので、そのことにフロイトが耐えかねたのではないか、というのが土居先生がその著書の中で書いておられました。

自由連想法の性質、方法、根拠については、土居先生の著された講談社学術文庫「精神分析」に詳しく載っていますので、より詳しく知りたい方はこちらを参照されると良いと思います。
土居先生はこちらを30代で書かれたとか…すごい話です。

以上より、選択肢②は不適切と判断できます。



『③非指示的方法』

クライエント中心療法は、まず、「非指示的」療法として世に知れ渡りました
この「非指示的」という表現は、それ以前のカウンセリング(主に精神分析的)に対する方法論的なアンチテーゼとしての意味が強く付与されていると言えます。
従来の方法論に対して異なるものであるという主張内容が、取っ掛かりとしてはインパクトがあって論争になり易かったと思われます。

このこと自体は意味深いものだったでしょうが、ロジャーズとしては治療的体験を伝達する形とは離れたところの議論になっていることに危惧を感じていました。
事実、クライエント中心療法が技術・方法として論じられることについて否定的な見解を述べています(例えば、「クライエント中心療法」など)。

以上のように、「非指示的方法」というのはクライエント中心療法の成立過程、世間に広まる過程の中で用いられた名称であると言えます。
よって、選択肢③は不適切な内容と言えます。



『④系統的脱感作法』

こちらは第一世代の行動療法の技法になります。
ウォルピが創始した技法で、恐怖症や不安障害に使われます。
拮抗条件づけという学習を使用しており、副交感神経優位のリラックス状態で、交感神経が活性化した不安状態が生じにくいという考えに基づいています。

これを逆制止と言い、不安や恐怖の刺激が現れるときにリラックスする状態をつくり、不安・恐怖刺激に遭遇しても不穏感情が生じにくくすることを目的とした技法です。

以上のように、選択肢④は不適切と言えます。



『⑤非合理的信念を変容させる方法』

エリスの影響を受けてBeck,A.T.は、1960年代からうつ病の臨床研究を始め、70年代に認知療法を完成させました。
認知療法は、うつ病、不安障害、PTSD、強迫性障害などに有効とされています。

認知療法の中核理論として、否定的自動思考と呼ばれる認知の歪みの是正を重視しています。
出来事に対してある認知があり、それが抑うつ症状などの感情を引き起こすと考えます。

認知では「スキーマ(深層にある信念や態度などの認知構造)→(推論の誤り)→自動思考」があり、推論の誤りは以下のものが示されています。
  1. 恣意的推論:証拠もないのにネガティブに
  2. 選択的注目:明らかなものには目もくれず、些細なネガティブに
  3. 過度の一般化:坊主憎けりゃ袈裟まで
  4. 拡大解釈と過小評価:失敗を人格全体に、成功を小さなものと思う
  5. 個人化・自己関係づけ:関係ないものを自分に関係すると思う
  6. 完全主義・二分的思考:白黒つけたい

こうした推論の誤りに対して、認知を同定・検証・修正するといった関わりや、ホームワークとして非機能的思考記録を取ってもらうなどの方法を採ることが多いです。
なお「非合理的信念」という考え方はエリスの論理療法にもあり、論理療法ではこれを論駁するという方法を持って対応しています。

以上のように、選択肢⑤が適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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