公認心理師 2018-121

2018年11月28日水曜日

C.R.Rogersによるクライエント中心療法における共感的理解について、誤っているものを1つ選ぶ問題です。
心理療法の各論の一つとしてクライエント中心療法が出題されましたね。

APAの調査などでは、認知行動系の心理療法に比して効果が確認されていないという結果が出ていますが、現在の心理療法の世界に影響を与えた人物としてロジャーズの名前はずっと上位に位置しております。
特にロジャーズが示した6条件(3条件という言い方が一般的か?)は、カウンセリングにおけるグランド・セオリーとも言うべきものであり決して軽視すべきではないと断言できます。



解答のポイント

「治療上のパーソナリティ変化の必要にして十分な条件」の内容を把握していること。
「クライエント中心療法」の内容も把握しておくとなお良い。



選択肢の解説


『①建設的な方向に人格が変容するために必要な条件の1つである』

「クライエント中心療法」出版の6年後の1957年に、ロジャーズはこれまでの諸論文における様々な考えを統合する形で「治療上のパーソナリティ変化の必要にして十分な条件」という論文を発表しました。
この論文は、ロジャーズの考えを要約するものとしても、整理したものとしても考えることができ、ロジャーズの論文の中でも重要なものの1つに数えられます。

この論文の中でロジャーズは、建設的なパーソナリティ変化が起こるためには、次のような条件が存在し、それがかなりの期間継続することが必要であるとし、以下の6つの条件を提示しました。
  1. 2人の人が心理的な接触をもっていること 。
  2. 第1の人(クライエントと呼ぶことにする)は、不一致の状態にあり、傷つきやすく、不安な状態にあること 。
  3. 第2の人(セラピストと呼ぶことにする)は、その関係のなかで一致しており、統合していること。
  4. セラピストは、クライエントに対して無条件の肯定的配慮を経験していること 。
  5. セラピストは、クライエントの内的照合枠を共感的に理解しており、この経験をクライエントに伝えようと努めていること
  6. 共感的理解と無条件の肯定的配慮が、最低限クライエントに伝わっていること。
ロジャーズは、この6条件以外の「他のいかなる条件も必要ではない。もしこれらの6つの条件が存在し、それがある期間継続するならば、それで十分である。建設的なパーソナリティ変化の過程が、そこに現われるだろう」としています。

以上より、選択肢①は正しいと言え、除外する必要があります。



『②セラピストが共感的理解をしていることがクライエントに伝わる必要がある』

上記の6条件を再録すると以下の通りです。
  1. 2人の人が心理的な接触をもっていること 。
  2. 第1の人(クライエントと呼ぶことにする)は、不一致の状態にあり、傷つきやすく、不安な状態にあること 。
  3. 第2の人(セラピストと呼ぶことにする)は、その関係のなかで一致しており、統合していること。
  4. セラピストは、クライエントに対して無条件の肯定的配慮を経験していること 。
  5. セラピストは、クライエントの内的照合枠を共感的に理解しており、この経験をクライエントに伝えようと努めていること。
  6. 共感的理解と無条件の肯定的配慮が、最低限クライエントに伝わっていること
下線部の通り、ロジャーズは共感的理解がクライエントに伝わる必要があることを指摘しています。

セラピストが、クライエントに関して体験している受容の気持ちと理解したところを電+する作業は、実際の面接の中ではきわめて難しいことであり、この条件がどのように成しうるかによって、前5条件の成立に大きく影響すると言えます。
また、単に「わかったつもり」になっているだけでもダメだということですね。

以上より、選択肢②は正しいと言え、除外する必要があります。



『③セラピストの内的照合枠に沿って、クライエントが感じている世界を理解することである』

ロジャーズは1951年、シカゴでの実践と研究の成果を「クライエント中心療法」として出版しています。
その本には、後に自己理論と呼ばれるようになる口ジャーズ独自のパーソナリティ理論が収録されました。
これは、自己概念と生命体の体験の一致・不一致からパーソナリティの適応をとらえるものですが、その基本的な視点として「内部的照合枠(the internal frame of reference)」という概念が提出されています。

この点についてロジャーズは以下のように述べています。
「カウンセラーが可能な限りにおいてクライエントの内部的照合枠を身につけること、クライエントが自ら眺めているままにクライエント自身を知覚すること、そのようにしている間は外部的照合枠にもとづく一切の知覚を排除しておくこと、そして、その感情を移入して理解したことをコミュニケートすること」

ロジャーズは、クライエントがどのような精神病理なのか把握しようとすること、訴えの原因を推測することなど、いわばクライエントを客観的にないしは外側から理解しようとする意識の集中の仕方を「外部的照合枠」によるクライエント理解と考えました。

それに対して、クライエントのいる場所から世界の見え方・自分自身の見え方をカウンセラーが共有しようとする活動を「内部的照合枠」によるクライエント理解と呼び、カウンセリングプロセスでは、こちらに全精力を注ぎこむことをロジャーズは要求します。

以上より、選択肢の「セラピストの内的照合枠に沿って」ではなく「クライエントの内的照合枠に沿って」が正しい内容です。
こちらについては、選択肢①および②で示した6条件にも含まれていますね
よって、選択肢③は誤りと言え、こちらを選ぶ必要があります。



『④クライエントの内的世界を「あたかもその人であるかのように」という感覚を保ちながら理解することである』

選択肢③で示した「クライエント中心療法」の一文を再録すると以下の通りです。
「カウンセラーが可能な限りにおいてクライエントの内部的照合枠を身につけること、クライエントが自ら眺めているままにクライエント自身を知覚すること、そのようにしている間は外部的照合枠にもとづく一切の知覚を排除しておくこと、そして、その感情を移入して理解したことをコミュニケートすること」

また「治療上のパーソナリティ変化の必要にして十分な条件」においては、以下のように記載されています。
「クライエントの私的な世界を、あたかも自分自身の私的な世界であるかのように、感じ取ること、しかし、決して「あたかも、かのように」という特質を失わないままで、そうすること-これが共感であり、そしてこれは治療に不可欠のようである」
「クライエントの怒りや怖れや混乱を、あたかも自分自身のものであるかのように、感じ取ること、しかも、自分自身の怒りや怖れや混乱を、そこに混入させないようにしたままで、そうすること、これが私たちが記述しようとしている条件である」

ロジャーズは「あたかも、かのように」、すなわち「as if」という表現を重視しました。
100%クライエントと同じは難しいとしても、そこにできる限り近づこうとするという意識が見て取れます。

上記より、選択肢④は正しいと言え、除外する必要があります。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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