公認心理師 2018-119

2018年11月27日火曜日

重大な加害行為を行った者の精神状態に関する鑑定(いわゆる精神鑑定)について、正しいものを1つ選ぶ問題です。

医療観察法については出題される可能性があることはブループリントからも明らかでしたが、問題の内容は医療観察法のみの知識では解ききれないようなものでした。
最高裁の判決等も若干求められるなど、解説を作る上では結構難問だったという印象です。




解答のポイント

医療観察法について把握していること。
その他、刑法39条、一事不再理の原則、必要的減軽、などについても知っていると望ましい。



選択肢の解説


『①裁判所が鑑定の結果とは異なる判決を下すことは違法とされている』

まず本問全体にわたって重要なのが「責任能力判断は法律的判断」という原則です。
裁判所は、鑑定人の鑑定意見に拘束されず、自由に判断をなし得ます。
被告人の責任能力の有無については、あくまでも裁判所が判断するということを覚えておきましょう。

ただし、これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り、その意見を十分に尊重して認定に用いなければならないとされています。

上記のできる限り精神鑑定の結果を尊重しなければならない、という点については「最高裁平成20年4月25日判決」で以下のように示されたものです。
「生物学的要素である精神障害の有無及び程度並びにこれが心理学的要素に与えた影響の有無及び程度については,その診断が臨床精神医学の本分であることにかんがみれば、専門家たる精神医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には、鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり、鑑定の前提条件に問題があったりするなど、これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り、その意見を十分に尊重して認定すべきものというべきである」

上記の通り、裁判所が精神鑑定の結果とは異なる判決を下すことは、「鑑定人の公正さや能力に疑いが生じたり、鑑定の前提条件に問題があったりするなど、これを採用し得ない合理的な事情が認められる」場合においては、有り得ると言えます。
よって、選択肢①は誤りと判断できます。



『②被告人が心神耗弱であると裁判所が判断した場合、罪を軽減しなければならない』

先述の通り、被告人の責任能力の所在は裁判所が判断します。
選択肢前半の「被告人が心神耗弱であると裁判所が判断した」は適切といえます。

更に、刑法第39条には「心神喪失者の行為は、罰しない」、同条第2項には「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」と定められております。
よって選択肢後半の「罪を軽減しなければならない」という内容に関しても、その主語が裁判所になっているので適切といえます。

ちなみに刑の減軽には「必要的減軽」と「裁量的減軽」があります。
必要的減軽とは、心神耗弱(刑法39条)、中止犯(刑法43条但書:途中で犯罪行為を止めた場合)、従犯減軽(刑法63条:犯罪のほう助をしていた場合)が該当し、法律上一定の条件を満たす場合は「必ず」減軽しなければならない事由とされています

よって、選択肢②は正しいと判断できます。



『③被告人が心神喪失であると裁判所が判断しても、他の事情を考慮した上で必ずしも無罪にする必要はない』

先述の通り、刑法第39条には「心神喪失者の行為は、罰しない」、同条第2項には「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」と定められております。

また責任能力判断は法律的判断であり、裁判所が判断を行うものです。
その裁判所が心神喪失であると判断したならば、法律に従って「罰しない」ことが求められます

選択肢後半にある「他の事情を考慮した上で」というのは、心神喪失という判断を行う以前に考慮するものです。
例えば、いわゆる「原因において自由な行為」(泥酔運転して事故を起こした場合、事故時は心神喪失だったが、車を運転することを予定しながら飲酒により泥酔という点から完全責任を問える等)についてですが、この場合はそもそも刑法39条の適用の対象外とされます。
つまり、選択肢③にある「心神喪失であると裁判所が判断した」ということは、「原因において自由な行為」などが該当しないという判断を経てのものであると考えることが妥当です。

よって、選択肢③は誤りと判断できます。



『④心神喪失者として刑を免れた対象者が、後に医療観察法に基づく鑑定を受けた場合、鑑定結果によっては先の判決が変更されることがある』

こちらについては一事不再理の原則を踏まえて判断する問題だと思われます。
一事不再理とは、ある刑事事件の裁判について、確定した判決がある場合には、その事件について再度、実体審理をすることは許さないとする刑事手続上の原則です。

日本国憲法39条が「何人も……既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。叉、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない」と規定しているのは、この原則を明らかにしたものと解されています。

よって、「心神喪失者として刑を免れた対象者」については、その時点で判決が確定していることを指しており、一事不再理の原則からすると、こちらを再度審理することはあり得ないと言えます。

以上より、選択肢④は誤りと判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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