公認心理師 2018-105

2018年11月18日日曜日

虐待など、父母による親権の行使が困難又は不適当な場合、子や親族などの請求により親の親権を一時的に停止することができるのは誰かを選ぶ問題です。

しつけと称して子どもに暴力を振るったり、暴言を吐いたり、子どもの世話を放棄したりするなどの児童虐待は、親権の濫用に当たります。
このような親権の濫用があったとき、民法では、子どもの親族などが家庭裁判所に申し立てることにより、親権を奪うことができる「親権喪失」という制度が設けられています。


しかし、親権喪失制度は、親権を無期限に奪うものですから、親子関係を再び取り戻すことができなくなるおそれがあります。
そのため、児童虐待の現場では、虐待する親の親権を制限したい場合でも、「親権喪失」の申立てはほとんど行われていないという実状がありました。

こうしたことから、親権を奪う以外の方法で、虐待する親の親権を制限できる新たな制度を設けることなどを目的に、児童虐待防止の視点から平成23年に改正が行われました。
本問題はその改正に基づくものです。



解答のポイント

民法改正による「親権停止の審判」を把握していること。
選択肢にある各立場の法律上の役割を理解しているとなお良い。



選択肢の解説


『⑤家庭裁判所(裁判官)』

本問題は、民法に定められている「親権停止の審判」について問うものです。
法務省のこちらのページが詳しいですね。

民法第834条の2は「親権停止の審判」について記載があります。
「父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる

そして同条第2項には以下のように記載されています。
家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める」

また民法第835条には「管理権喪失の審判」に関する規定が定められています。
「父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、管理権喪失の審判をすることができる

以上より、親権停止の審判は家庭裁判所が検察官等の請求によって行うことができます。
(こちらは親権停止だけでなく、「親権喪失の審判」(民法第834条)でも同様です)
よって、選択肢⑤が正しいと言えます。


『②検察官』

先述の通り、検察官は子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人と並んで、親権の停止(喪失)において「親権停止の請求」を行う立場です。

その他、民法における検察官の役割を列挙すると以下の通りです。

  • 後見開始の審判(第7条)、後見開始の審判の取消し(第10条):請求する立場
  • 不在者の財産の管理(第25条):請求する立場
  • 特別養子縁組の離縁(第817条の10):請求する立場
  • 第三者が無償で子に与えた財産の管理(第830条):請求する立場
  • 後見人の解任(第845条):請求する立場
  • 推定相続人の廃除に関する審判確定前の遺産の管理(第895条):請求する立場
  • 相続財産の管理(第918条第2項):請求する立場
  • 相続財産の管理人の選任(第952条):請求する立場
  • 相続人の捜索の公告(第958条):請求する立場

他にもありますが、きりがないのでこの辺で。
全て検察官は請求する立場ですね。
ちなみに児童虐待防止法には、検察官の記載は無いようです。

以上より、選択肢②は誤りと言えます。



『①知事』

先述の通り、「親権停止の請求」について知事は関与しません
民法自体にも、都道府県知事の記載は見当たりません。

一方で、知事は児童虐待防止法に多く登場します。
以下の通りです。

  • 通告又は送致を受けた場合の措置(第8条2)
  • 出頭要求等(第8条の2)
  • 立入調査等(第9条)、再出頭要求等(第9条の2)、臨検・捜索等(第9条の3)
  • 警察署長に対する援助要請等(第10条)、都道府県知事への報告(第10条の3)
  • 児童虐待を行った保護者に対する指導等(第11条)
  • 施設入所等の措置(第12条の2)、保護者の意に反する施設入所等の措置(第12条の3)、保護者の付きまとい・徘徊の禁止(第12条の4)
  • 施設入所等の措置の解除等(第13条)、都道府県児童福祉審議会等への報告(第13条の5)
多くの措置が知事の力のもとで行われているのがわかりますね。
児童相談所職員は、基本的に県職員ですから、それが法律的にも形となっているということです。

以上より、選択肢①は誤りと言えます。



『③市町村長』


先述の通り、「親権停止の請求」について知事は関与しません
民法自体にも、市町村長の記載は見当たりません。

児童虐待防止法第13条の4「資料又は情報の提供」に以下のように記載があります。
「地方公共団体の機関及び病院、診療所、児童福祉施設、学校その他児童の医療、福祉又は教育に関係する機関(地方公共団体の機関を除く)並びに医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師、児童福祉施設の職員、学校の教職員その他児童の医療、福祉又は教育に関連する職務に従事する者は、市町村長、都道府県の設置する福祉事務所の長又は児童相談所長から児童虐待に係る児童又はその保護者の心身の状況、これらの者の置かれている環境その他児童虐待の防止等に係る当該児童、その保護者その他の関係者に関する資料又は情報の提供を求められたときは、当該資料又は情報について、当該市町村長、都道府県の設置する福祉事務所の長又は児童相談所長が児童虐待の防止等に関する事務又は業務の遂行に必要な限度で利用し、かつ、利用することに相当の理由があるときは、これを提供することができる」

被虐待児童の情報の提供を「求める側」として記載されていますね。

以上より、選択肢③は誤りと言えます。



『④児童相談所長』

先述の通り、「親権停止の請求」について知事は関与しません
民法自体にも、児童相談所長の記載は見当たりません。

児童虐待防止法に出てくるのは以下の通りです。

  • 通告又は送致を受けた場合の措置(第8条):当該児童の調査や一時保護が適当と見られるときに児童相談所長に通知する。
  • 警察署長に対する援助要請等(第10条):一時保護の執行の際、警察に助力を求める場合は児童相談所長が行う。
  • 児童虐待を行った保護者に対する指導等(第11条):知事が必要がある児童の一時保護を児童相談所長に行わせる、勧告に従わない親への対処
  • 面会等の制限等(第12条):一時保護所での面会や通信の制限を保護者に向けて行うことが可能。
  • 資料又は情報の提供(第13条の4):虐待の情報を求める
知事と児童相談所長の権限の違いを弁別しておくことが重要ですね。
試験に出しやすそうな気がします。

以上より、選択肢④は誤りと言えます。


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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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