公認心理師 2018-79

2018年10月29日月曜日

認知心理学について、最も適切なものを1つ選択する問題です。
認知心理学の説明を選べることよりも、それ以外の選択肢がどの心理学派・立場を示しているかを説明できることが重要です。


解答のポイント

心理学の歴史の流れに沿って、各学派の定義・基本的な考え方を理解していること。



選択肢の解説


『①まとまりのある全体性を重視する』

北アメリカで行動主義が盛んになったころ、ドイツではヴェルトハイマーやケーラーらが心理現象の全体性を重視し、心を構成要素の集合と考えるヴントの構成主義を批判しました。

その根拠としてよく示されるのが「仮現運動」です。
これは2点がある一定のタイミングで継時点滅することで、2点が動いたように見える現象を指します。
構成主義の考え方からすると、人間にはこれらが単なる2点の点滅にしか見えないはずであり、「動いて見える」と感じるのは部分を超えた全体性の存在を示しているとしました。

すなわちヴェルトハイマーやケーラーらは、心理現象全体が持つ特性は構成要素に還元できず、1つのまとまりとしての全体をそのまま研究すべきと主張し、この1つのまとまりのことを形態(=ゲシュタルト)と呼ぶことから「ゲシュタルト心理学」と呼ばれています。

以上より、選択肢①の内容はゲシュタルト心理学のものであり、誤りと言えます。



『②内観と実験との2つを研究手法とする』

ライプチヒ大学で世界で最初に心理学実験室を設けたヴントは、実験参加者に自身の意識の内容を観察・報告させる内観法と呼ばれる方法を用いて研究を行いました。

これは厳密に統制された条件下での分析であり、意識の構成要素を純粋感覚と単純感情であるとし、それらの複合体として意識の成り立ちを説明しました。
これは自然科学の方法論を心理学に応用しようとしたものであり、実験的心理学の源流とも言えます。

このような考えに基づくヴントの心理学は「構成主義心理学」と呼ばれています。
以上より、選択肢②の内容は構成主義心理学のものであり、誤りと言えます。



『③観察可能な刺激と反応との関係性を重視する』

ヴントが研究対象とする意識は外界からの観察ができない主観的な現象です。
この点からワトソンは構成主義心理学を批判し、心理学が科学になるためには外部から観察可能な「行動」を研究対象とするべきと主張しました。

ワトソンの立場は行動主義と呼ばれ、そこから示された学習観はS-R連合理論と呼ばれます
S-R連合理論では、学習の基本的単位は条件づけによって形成される刺激と反応の連合にほかならず、人間が行う高度な学習も、分析すれば刺激と反応の連合という要素に還元できると考えられました。

以上より、選択肢③の内容は行動主義に関するものであり、誤りと言えます。



『⑤心理の一般性原理を背景にしながら個人の個別性を重視する』

カウンセリングでは、クライエントの疾病性(問題や症状に限定して関わる)ではなく、事例性(生活者としての生身の全体の人間そのものとみなす)を重視します。
この事例性を通して、クライエント独自の個別性への理解を深めていくことが求められ、この個別性への理解がなくては、カウンセリングは一般的なアドバイスと相違ないものとなってしまいます。

もちろん、事例が示している問題や症状から考えられる一般原理についての理解も重要であり、この理解が深いほど多領域へのコンサルテーションの質も高いものになっていきます。
この一般原理は、数値的に示されている研究結果や、多くの事例体験から導かれた経験則などによって構成されていることが多いです。

セラピストに求められるのは、こうした一般原理を把握しつつも、目の前のクライエントにそれを当てはめずに個別性をもつ対象として関係していくことです。
「勉強はたくさんするけど、クライエントに会うときにはそれを全て忘れる」と元京都大学教授の皆藤先生がおっしゃっておられました。

以上より、選択肢の内容はカウンセリングを中心とする「臨床心理学」全般の内容を示していると思われます。
よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。



『④心的過程は情報処理過程であるという考え方に基づく』

Lachman(1979)は認知心理学について以下のように説明しています。
  • 認知心理学は、コンピュータと同様に人も情報を処理するシステムとする考え方をとる。
  • コンピューターが入力された情報を符号化し、貯蔵し、比較し、検索するように、人間もまた情報を処理する
  • 確かに人間の心の働きは複雑であるが、最終的には、このような比較的少数の基本的な概念で説明できる

よって、選択肢④は適切な内容と言えます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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