公認心理師 2018-74

2018年10月23日火曜日

独身の息子と二人暮らしの75歳女性の事例です。
認知症の可能性がある女性Aと、独身の息子との関係から「市の対応として」不適切なものを選ぶ設問ですね。

事例の情報は以下のとおりです。
  • 2年位前からスーパーで連日同じ食材を重ねて買うようになり、スーパーからの帰り道で道に迷うなどの行動が見られ始める。
  • 午前中から散歩に出たまま夕方まで帰らないこともあった。
  • 最近、息子の怒鳴り声が聞こえるようになり、時々Aの顔にあざが見られるようになった。
  • 近所の人が心配して、市の相談センターに相談した。

上記の息子の行動は、高齢者虐待防止法における身体的虐待の可能性があります
以上を踏まえ、各選択肢の検証を行っていきます。



解答のポイント

市の対応として「あり得る」ものは「適切」と判断すること。
高齢者虐待防止法の虐待区分とその内容について把握していること。



選択肢の解説


『①虐待担当部署への通報』

事例の状況から考えて、Aは認知症の疑いがあります
認知症は一般に外ではそれほど症状が出なくても、家の中では顕著に現れやすく、Aは2年前からその症状が外で現れていることを考えると認知症がかなり進行している可能性もあります

このことは、家で監護している息子の負担がかなり大きい可能性が考えられ、その疲れが虐待という形でAに向かっていると考えることも可能です。
「息子の怒鳴り声が聞こえる」「時々Aの顔にあざが見られるようになった」など深刻な結果が生じている可能性があり(息子が殴ったという確証は現時点ではありませんから、あくまでも「可能性」です)、虐待対応部署に通報することは適切な対応と思われます。

高齢者虐待防止法第7条にも以下のように記載があります。
「養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、当該高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない」

よって、選択肢①は適切な対応といえるので、除外できます。



『②息子への指導及び助言』

Aが認知症である可能性、息子が虐待をしている可能性はすでに述べたとおりです。
周辺の情報から、この親子、特に息子の状況が孤立しており、そのことが虐待の発生要因として捉えることができる場合、息子本人にアプローチすることで孤立感の軽減を狙うことがあり得ます

もちろん、息子にアプローチすることでAへの対応がどのように変化するのか読みにくいという見方もあるので、上記のように直接アプローチすることが可能であるという見立てが必要になります。
換言すれば、そういった見立てが可能であれば、選択肢のように直接アプローチするということもあり得るといえます。

よって、選択肢②の対応は不適切とは言えないので、除外することができます。



『③Aの居室の施錠の提案』

高齢者虐待防止法における「身体的虐待」の中には、「外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為」が含まれます(厚生労働省の「高齢者虐待防止の基本」より)。
その行為の具体例は以下の通りです。
  • 身体を拘束し、自分で動くことを制限する(ベッドに縛り付ける。ベッドに柵を付ける。つなぎ服を着せる。意図的に薬を過剰に服用させて、動きを抑制する。など)。
  • 外から鍵をかけて閉じ込める。中から鍵をかけて長時間家の中に入れない。など

すなわち、この選択肢の内容は身体的虐待の提案ということになります。
当然、あり得ない提案ということになりますね。
よって選択肢③の対応は不適切といえ、こちらを選択することが求められます。



『④徘徊時に備えた事前登録制度の利用』

事前登録制度とは以下のようなものです。
  • 見守り体制づくりの一環又は延長として、地域包括支援センターや認知症地域支援推進員が中心となって、事前登録に関する地域への啓発を実施。
  • 認知症などによる徘徊の可能性のある者の情報(氏名、住所、電話番号、生年月日、性別、緊急時の連絡先、身体的特徴等の情報等)について、市区町村及び警察署に登録。登録者には登録番号等を記載したカード等を配布。登録者が徘徊し保護された場合に、登録情報から個人を特定し、ご家族等に連絡。
  • 事前登録者に関する基本情報や写真を、いつでも対応できるようPC でデータ管理しており、行方不明時には、当日の情報(服装等)のみ入力することで捜索できるようにしている。また、本人の状況や写真などについては、直近の情報が得られるよう、一年に一度更新している。

以上のように、徘徊の可能性がある認知症老人への支援制度と言えます。
事例の情報でも「スーパーからの帰り道で道に迷うなどの行動が見られ始める」「午前中から散歩に出たまま夕方まで帰らないこともあった」などの記述が見られます。

Aが認知症であるという仮説を元に、こうした支援システムを提案・活用することはある得る対応と思われます。
よって、選択肢④はあり得る対応であり、除外することができます。



『⑤民生委員への情報提供と支援の依頼』

民生委員は民生委員法に規定されている、日本の市町村の区域に配置されている民間の奉仕者です。
民生委員法第14条第1項によると、以下のような役割を持ちます。
  • 住民の生活状態を必要に応じて適切に把握しておくこと
  • 援助を必要とする者がその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように生活に関する相談に応じ、助言その他の援助を行うこと。
  • 援助を必要とする者が福祉サービスを適切に利用するために必要な情報の提供その他の援助を行うこと。
  • 社会福祉を目的とする事業を経営する者又は社会福祉に関する活動を行う者と密接に連携し、その事業又は活動を支援すること。
  • 福祉事務所その他の関係行政機関の業務に協力すること
  • 老人福祉法の施行について、市町村長、福祉事務所長又は社会福祉主事の事務の執行に協力すること。

前述のとおり、Aおよび息子は地域から孤立している可能性があり、そのことが虐待という事態を引き起こしている可能性もあります。
よって、地域の見守りを厚くすることは、こうした孤立感の軽減や更なる問題が生じたときに早期発見・早期対応が可能な体制を整えるという意義があります。

よって、選択肢⑤はあり得る対応と言えるので、除外することができます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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