公認心理師 2018-72

2018年10月25日木曜日

35歳営業職の男性Aの事例です。
社会の相談室に勤務する公認心理師の対応を問う問題ですね。
キャリアカウンセリングの枠組みで捉えていきましょう。
ホームズ&レイのリストじゃないですが、昇進も危機になりうるストレスフルな出来事ですね。

事例の情報は以下の通りです。
  • 1カ月ほど前に、直属の上司Bからそろそろ課長に昇進させると言われ、喜んだ。
  • 昇進の準備として部署の中期目標を作成するよう指示されたが、いざ書こうとすると何もかけず、不安になり他の仕事も手につかなくなった。
  • 本人は「こんな状態で課長になる自信がない」と訴える。
  • Aの許可を得てBに話を聞くと、Aの営業成績は優秀で、部下の面倒見もよく、Bとしても会社としても、課長に昇進することを期待している。
選択肢は、Aの状態をどう見立てるかがポイントになっていますね。



解答のポイント

Aの状態をどのように見立てるか。
過剰なアプローチが個人のキャリアの妨げになる可能性があることを自覚しておくこと。



選択肢の解説


『①Aに中期目標をどのように書くべきであるか助言する』

現在、上司Bから求められている中期目標を書くということについては、Aが課長に昇進した場合、四半期ごとなどに求められる可能性が高いものです。
この対応は急場しのぎという印象が強く、Aの今後のことを考えての対応には思えません。

Aが課長として、そしてその後のキャリアを生きていく人として捉えていくのであれば、A自身がこの課題に取り組めるよう支援していくことが、支援者に求められる姿勢だと言えます。

学生相談などでは、レポートの書き方を教えるということもありますが、事例の内容からAが陥っている問題はそういった類のもの(単なる能力不足や発達的問題、経験不足等)ではないと考えるのが妥当です。
よって、選択肢①は不適切と判断できます。



『②現在Aは抑うつ状態であるため、まず精神科への受診を勧める』

このような対応を取るには、Aが抑うつ状態であると判断できるに足る情報が必要です。
しかし、Aが示しているのは「いざ書こうとすると何もかけず、不安になり他の仕事も手につかなくなった」「「こんな状態で課長になる自信がない」と訴える」に留まっています。

このような訴えから、例えばDSM-5やICD-10の基準を満たしていると考えるのは難しく、精神医学的な意味でのうつ病には該当しないと言えます。
また「抑うつ状態」とマイルドな捉え方をしたとしても、事例の情報からではやはり該当しないと考えられます。
よって、選択肢②は不適切と言えます。



『③昇進はチャンスと捉えられるため、目前の中期目標の作成に全力を尽くすよう励ます』

この選択肢(および次の選択肢④)を考えていくには、Aがどういった状態なのかをきちんと把握することが重要です。
事例からは、Aが周囲からも経歴的にも優秀な人物であると評価されている、中期目標という課題によって状態を崩していることが明白、などが読み取れます。

一般に、昇進等に伴って以前よりも広い視野での展望が求められます。
ふだんの仕事の中で「今なにが必要か」については考えることがあっても、「中長期的な展望で現在の仕事を捉える」と考えることは機会がなければなかなか難しいものです。
Aに求められるのは、そういった思考のパラダイムシフトであり、支援者はこれを促進させるアプローチが求められます

選択肢の内容にある「昇進はチャンスと捉えられる」という思考自体が現在志向的であり(非常に即物的な考え方であり)、Aに求められている未来志向型のパラダイムとは逆の捉え方と思われます。
こうしたアプローチは、Aの視野を狭くし、より大きな問題に発展しかねません

以上より、選択肢③は不適切と判断できます。



『④目前の課題に固着するのではなく、キャリア全体から現在の課題を眺めることを支援する』

Aの状態はフォーカシング指向心理療法の枠組みで言えば、悩みに包まれているような印象です。
これは現在志向的な状態ですが、「中期目標を書く」という課題は未来志向的であり、状態と課題の齟齬があると言えます。

そこで、狭窄している視野を広げる意味で、選択肢にあるような「キャリア全体から現在の課題を眺めることを支援する」ことは有用であると考えられます。
Aのこれまでのキャリアを俯瞰して眺めること及び自分がどういったキャリアを歩んでいくイメージを持っているかを考えることで、何が課題なのかを掴みやすくすることができますし、この対応自体がAのこれまでのキャリアへの敬意が含まれているように感じます。

よって、選択肢④は適切と判断できます。



『⑤現在のAには中期目標の作成は過重な負荷であるため、担当を外してもらうよう助言する』

この対応が適切になるには「現在のAには中期目標の作成は過重な負荷」と考えるに足る情報が必要です。
あくまでもAが示しているのは、不安で他の仕事も手につかない、自信がない、ということに留まっています。

周囲の評価として、Aが優秀であることは示されています。
優秀な人であっても状態が悪ければ難しいということもあり得ますが、事例の内容からはそうした状態悪化と捉えられる表現が見当たりません(他の仕事が手につかない、は状態悪化による処理能力の低下と捉えるには無理があります)。

よって担当を外すという対応はやや大げさな印象を受け、Aのキャリアに不可逆的な傷を負わせることにもなりかねません
以上より、選択肢⑤は不適切と判断できます。

Share /

0 件のコメント

コメントを投稿

About Me

小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

Followers

CONTACT

名前

メール *

メッセージ *

© 公認心理師・臨床心理士の勉強会
designed by templatesZoo