公認心理師 2018-60

2018年10月14日日曜日

うつ状態で入水自殺しようとした33歳女性の事例です。
この問題自体は、特に臨床的な判断を求められているものではありませんね。


この問題で問われているのは、公認心理師の職域の把握だと思われます。
乱暴に言えば「分を弁えているか否か」ということです。
見聞する臨床心理士に対する他職種からの批判の多くは、この点について心理士側に瑕疵があることが少なくないように思えます。



解答のポイント

精神保健福祉法における任意入院の条項を把握していること。
公認心理師という資格における責任の範囲を明確に把握していること。



選択肢の解説


『②退院には家族の許可が必要であることを伝える』

まず退院の可否を決定するのは家族ではなく「病院の管理者」になります。
精神保健福祉法第21条第1項~第3項には、その旨の記載があります。

一方、退院に家族が絡んでくるのは退院請求についてです。
精神科病院に入院中の者又はその家族等(その家族等がない場合又はその家族等の全員がその意思を表示することができない場合にあつては、その者の居住地を管轄する市町村長)は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事に対し、当該入院中の者を退院させ、又は精神科病院の管理者に対し、その者を退院させることを命じ、若しくはその者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じることを求めることができる」(第38条の4)

これは退院請求を、本人だけでなく家族等も行うことができることを定めたものであり、退院の可否を家族が決められるということではありません。
ちなみに「家族等」については、医療保護入院でも重要なワードとなっています。

よって、選択肢②は誤りと判断できます。



『③意に反する入院は有益ではないため面接を中断する』

この内容にはいくつかの誤謬が見受けられます。

その一つ目が「意に反する入院は有益ではない」という箇所です。
本事例は自殺未遂歴があり、今回の入院も入水自殺を図ってのものです。
精神科医療に限らずですが、要心理支援者への対応はその福利に資するものでなくてはなりません
この事例では、入院当日の退院請求ですから、退院させることは自殺という本人の福利を害する結果になりかねません

二つ目として「面接を中断する」という点です。
この判断は、公認心理師としての職域の範囲を理解していないと言えます。
この判断の背景には「退院をしても良い」という考えがあってのものと考えられますが、退院の可否を決めるのは公認心理師ではなく病院の管理者です。

「自分の職種、自分が勤めている組織において、自分の責任で行えるのはどこまでか」をきちんと理解していることが、多職種と協働して職務にあたる上で不可欠な事項だと思われます。

よって、選択肢③は誤りと判断できます。



『④Aが希望すれば直ちに退院が可能であることを伝える』

こちらは以下の2点で適切でないと判断できます。
  1. 退院の可否は、本人や公認心理師の一存では決めることができないという法的な事実
  2. Aの自殺未遂歴や入院の経緯を踏まえれば、医師の診察は必須であると考えるのが妥当である。

上記2点については、他選択肢の解説でも詳しく述べております。
よって、選択肢④は不適切と判断できます。



『⑤外来に通院することを条件に、退院が可能であると伝える』


繰り返し述べているように、こうした判断をして良いのは公認心理師ではありません
法的には「病院の管理者」ですし、実務的には「主治医」になると考えられます。

臨床的には「自殺念慮が強い患者に対し、こういった対応はあり得ない」という考えもあるかもしれませんね。
しかし「こういう対応があり得るか否か」は、あくまでも「公認心理師が判断できないこと」ですので、選択肢の判断材料にはしない方が良いと考えます。

この選択肢が例えば「自殺の可能性が高いため、退院は難しいことを伝える」だった場合でも、やはり不適切と判断できます。
それはあくまでも「公認心理師が退院の可否を判断できない」という点が重要になるからです。

よって、選択肢⑤は不適切と判断できます。



『①主治医との面接が必要であることを伝える』

精神保健福祉法第21条の任意入院者への対応では以下のように示されております。
精神科病院の管理者は、自ら入院した精神障害者(任意入院者)から退院の申出があつた場合においては、その者を退院させなければならない」(第2項)

しかし、希望があればそのまま退院できるかというとそうではありません。
前項に規定する場合において、精神科病院の管理者は、指定医による診察の結果、当該任意入院者の医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めたときは、同項の規定にかかわらず、七十二時間を限り、その者を退院させないことができる」(第3項)

「前項に規定する場合において、精神科病院の管理者は、緊急その他やむを得ない理由があるときは、指定医に代えて指定医以外の医師に任意入院者の診察を行わせることができる。この場合において、診察の結果、当該任意入院者の医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めたときは、前二項の規定にかかわらず、十二時間を限り、その者を退院させないことができる」(第4項)

上記の第3項、第4項のような退院を制限せねばならないような事例はもちろんですが、それ以外の事例においても主治医の診察無しに退院が決定されるということは有り得ません。
事例のように、自殺企図があり、入水自殺を図ったことが入院の経緯としてあるならなおさらですね。

よって選択肢①は適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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