公認心理師 2018-58(解説に誤りがあります)

2018年10月11日木曜日

ここの解説には誤りがあります。
改めて正しい解説を別記事として作成します。


精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉に基づく処遇を問う設問です。
主に入院形態や隔離・身体拘束を行う際の規定について問うています。
この点については、以前の記事でも記載がありますので参考にしてください。


精神保健福祉法自体から出ているのは、5つの選択肢のうち1つだけです。
それ以外は「精神保健福祉法第37条第1項の規定に基づく厚生大臣が定める処遇の基準(昭和63年厚生省告示第130号)」から出題されています。

細かく見ておきなさいよ、ということですね。



解答のポイント

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律〈精神保健福祉法〉の内容を把握していること。
「精神保健福祉法第37条第1項の規定に基づく厚生大臣が定める処遇の基準」の内容を把握していること。



選択肢の解説


『①措置入院では手紙の発信が制限される』

こちらについては「精神保健福祉法第37条第1項の規定に基づく厚生大臣が定める処遇の基準」の中に示されております。

患者の通信・面会についての基本的な考え方としては以下の通りです。
  1. 精神病院入院患者の院外にある者との通信及び来院者との面会は、患者と家族、地域社会等との接触を保ち、医療上も重要な意義を有するとともに、患者の人権の観点からも重要な意義を有するものであり、原則として自由に行われることが必要である。
  2. 通信・面会は基本的に自由であることを、文書又は口頭により、患者及び保護者に伝えることが必要である
  3. 電話及び面会に関しては患者の医療又は保護に欠くことのできない限度での制限が行われる場合があるが、これは、病状の悪化を招き、あるいは治療効果を妨げる等、医療又は保護の上で合理的な理由がある場合であって、かつ、合理的な方法及び範囲における制限に限られるものであり、個々の患者の医療又は保護の上での必要性を慎重に判断して決定すべきものである。

上記のように、患者からの通信・面会の制限は基本的にありません。
※こちらの通信には手紙も含まれます。
一方で、家族からの信書(手紙)については以下のような制限があります。
  1. 患者の病状から判断して、家族等からの信書が患者の治療効果を妨げることが考えられる場合には、あらかじめ家族等と十分連絡を保って信書を差し控えさせ、あるいは主治医あてに発信させ患者の病状をみて当該主治医から患者に連絡させる等の方法に努めるものとする。
  2. 刃物、薬物等の異物が同封されていると判断される受信信書について、患者によりこれを開封させ、異物を取り出した上、患者に当該受信信書を渡した場合においては、当該措置を採った旨を診療録に記載するものとする。

以上のように、手紙の発信・受信は基本的に自由ですが、受信については病状等を勘案すること、異物が同封されていると思われる場合は例外ということです。
よって、選択肢①は誤りと判断できます。



『②任意入院の際は精神保健指定医の診察を要しない』

任意入院についての規定は精神保健福祉法第20条に示されております。
「精神科病院の管理者は、精神障害者を入院させる場合においては、本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない

上記のように任意入院の際は精神保健指定医の診察は要件とならないが、任意入院の場合でも精神保健指定医が関わる面があります
精神保健福祉法第21条第2項には、任意入院者から退院の申出があった場合においては、その者を退院させなければならないという決まりがあります。

しかし、第21条第3項に以下のように示されております。
「前項に規定する場合において、精神科病院の管理者は、指定医による診察の結果、当該任意入院者の医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めたときは、同項の規定にかかわらず、七十二時間を限り、その者を退院させないことができる

すなわち、任意入院であっても自傷他害の恐れがあるなど、そのまま退院させるわけにはいかないと精神保健指定医が判断した場合においては、72時間に限って退院させないことが可能になります。
たいていの場合は、この72時間の間に別の入院形態に変更するなどの措置を取ることが多いです。

ちなみに精神保健指定医の診察が難しい場合には、以下の第21条第4項に記されています。
「前項に規定する場合において、精神科病院の管理者は、緊急その他やむを得ない理由があるときは、指定医に代えて指定医以外の医師に任意入院者の診察を行わせることができる。この場合において、診察の結果、当該任意入院者の医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めたときは、前二項の規定にかかわらず、十二時間を限り、その者を退院させないことができる

以上のように、選択肢②の内容は正しいと判断できます。
(おそらくは)退院時の精神保健指定医の関与とごっちゃにならないかを問うている問題と思われます。



『③患者を隔離する際は精神保健指定医の診察を要する』

まず隔離が行われるシチュエーションは「精神保健福祉法第37条第1項の規定に基づく厚生大臣が定める処遇の基準」によって定められています。
  • 他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等、その言動が患者の病状の経過や予後に著しく悪く影響する場合
  • 自殺企図又は自傷行為が切迫している場合
  • 他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為、器物破損行為が認められ、他の方法ではこれを防ぎきれない場合
  • 急性精神運動興奮等のため、不穏、多動、爆発性などが目立ち、一般の精神病室では医療又は保護を図ることが著しく困難な場合
  • 身体的合併症を有する患者について、検査及び処置等のため、隔離が必要な場合

そして同じ基準の中に隔離についての運用も細かく規定されています。
  1. 患者の隔離(以下「隔離」という )は、患者の症状からみて、本人又は周囲の者に危険が及ぶ可能性が著しく高く、隔離以外の方法ではその危険を回避することが著しく困難であると判断される場合に、その危険を最小限に減らし、患者本人の医療又は保護を図ることを目的として行われるものとする。
  2. 隔離は、当該患者の症状からみて、その医療又は保護を図る上でやむを得ずなされるものであって、制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われるようなことは厳にあってはならないものとする。
  3. 12時間を超えない隔離については精神保健指定医の判断を要するものではないが、この場合にあってもその要否の判断は医師によって行われなければならないものとする。
  4. なお、本人の意思により閉鎖的環境の部屋に入室させることもあり得るが、この場合には隔離には当たらないものとする。この場合においては本人の意思による入室である旨の書面を得なければならないものとする。

上記のように、隔離であっても「12時間以内であれば」精神保健指定医の判断は要しません
選択肢③の内容をどう読み解くかが重要ですが、「12時間以内であれば精神保健指定医の診察は不要」ということが明確に言えるので、選択肢③の内容と矛盾があると判断できます。
よって、選択肢③は誤りと判断できます。



『④治療上の理由があれば、複数の患者を同じ病室に隔離することができる』

「精神保健福祉法第37条第1項の規定に基づく厚生大臣が定める処遇の基準」の「遵守事項」には以下のように示されております。
  • 隔離を行っている閉鎖的環境の部屋に更に患者を入室させることはあってはならないものとする。また、既に患者が入室している部屋に隔離のため他の患者を入室させることはあってはならないものとする。
  • 隔離を行うに当たっては、当該患者に対して隔離を行う理由を知らせるよう努めるとともに、隔離を行った旨及びその理由並びに隔離を開始した日時及び解除した日時を診療録に記載するものとする。
  • 隔離を行っている間においては、定期的な会話等による注意深い臨床的観察と適切な医療及び保護が確保されなければならないものとする。
  • 隔離を行っている間においては、洗面、入浴、掃除等患者及び部屋の衛生の確保に配慮するものとする。
  • 隔離が漫然と行われることがないように、医師は原則として少なくとも毎日1回診察を行うものとする。

上記のように、隔離という状況下において複数の患者を同じ病室に入れることは禁止されています
そもそも「他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等、その言動が患者の病状の経過や予後に著しく悪く影響する場合」などで隔離を行うわけですから、他の患者を入れてしまっては前提が崩れてしまいます
以上より、選択肢④は誤りと判断できます。



『⑤身体的拘束を行った場合は、身体的拘束を行った旨、身体的拘束の理由、開始と解除の日時などを精神保健指定医が診療録に記載する』

「身体的拘束」は上記の「隔離」よりも、より制限の強い対応になります。
「精神保健福祉法第37条第1項の規定に基づく厚生大臣が定める処遇の基準」における身体的拘束の基本的考え方は以下の通りです。
  1. 身体的拘束は、制限の程度が強く、また、二次的な身体的障害を生ぜしめる可能性もあるため、代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として行われる行動の制限であり、できる限り早期に他の方法に切り替えるよう努めなければならないものとする。
  2. 身体的拘束は、当該患者の生命を保護すること及び重大な身体損傷を防ぐことに重点を置いた行動の制限であり、制裁や懲罰あるいは見せしめのために行われるようなことは厳にあってはならないものとする。
  3. 身体的拘束を行う場合は、身体的拘束を行う目的のために特別に配慮して作られた衣類又は綿入り帯等を使用するものとし 手錠等の刑具類や他の目的に使用される紐縄その他の物は使用してはならないものとする。

「精神保健福祉法第37条第1項の規定に基づく厚生大臣が定める処遇の基準」には身体的拘束の「遵守事項」が以下のように定められています。
  1. 身体的拘束に当たっては、当該患者に対して身体的拘束を行う理由を知らせるよう努めるとともに、身体的拘束を行った旨及びその理由並びに身体的拘束を開始した日時及び解除した日時を診療録に記載するものとする
  2. 身体的拘束を行っている間においては、原則として常時の臨床的観察を行い、適切な医療及び保護を確保しなければならないものとする。
  3. 身体的拘束が漫然と行われることがないように、医師は頻回に診察を行うものとする。

上記の基準には「精神保健指定医」という記載はありません。
こちらについては、精神保健福祉法第19条の4の2に示されています。
指定医は、前条第一項に規定する職務を行つたときは、遅滞なく、当該指定医の氏名その他厚生労働省令で定める事項を診療録に記載しなければならない
この「前条第一項」の中には行動の制限(隔離や身体的拘束)が含まれています。
※「厚生労働省令で定める事項」は、上記の遵守事項の内容です。

以上のように、選択肢⑤は正しいと判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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