公認心理師 2018-52

2018年10月12日金曜日

教育現場における開発的カウンセリングで用いられる技法に関する設問です。

カウンセリングの役割として、治療、予防、開発の機能があります。
開発的カウンセリングは、治療モデルに代わる成長モデルによるアプローチであり、より意欲的・健康的な生活を目指す援助です。

Blocherは「開発的カウンセリング」という書物の中で、それを「人間の自由の拡大と、人間の効率性の拡大を目的にするもの」としています。


なお、本問では「開発的カウンセリング」として用いられている選択肢が3つ存在します。
このうち、「より適切と判断できるもの」を2つ選ぶことになりました。



解答のポイント

文部科学省が示している開発的カウンセリングの見解を把握していること。



学校における開発的カウンセリング

学校における開発的カウンセリングについては、文部科学省のホームページに説明が載っています。
「将来、児童生徒が自立して豊かな社会生活が送られるように、児童生徒の心身の発達を促進し、社会生活で必要なライフスキルを育てるなどの人間教育活動を行う

全ての児童生徒を対象とし、教科学習や特別活動、総合的な学習など、学級、学校全体の教育活動を通して、児童生徒の成長を促進する

「開発的カウンセリングは、児童生徒の心理的な発達を促進し、社会生活で必要なライフスキルを育て、困難な問題に対処する力やストレス耐性を高める活動である」

活動の視点として「人権教育」「ライフスキル教育」「キャリア教育」などがありますが、特に「ライフスキル教育」の項目の中で具体的な事項が以下の通り述べられています。

WHO(世界保健機関)は、どの時代、どの文化社会においても、人間として生きていくために必要な力があるとし、それをライフスキルと定義しました。
ライフスキルには、次の10のスキルがあるとされています。
  1. 意思決定(Decision making)
    生活に関する決定を建設的に行う力。様々な選択肢と各決定がもたらす影響を評価し、主体的な意思決定を行うことにより望ましい結果を得る。
  2. 問題解決(Problem solving)
    日常の問題を建設的に処理する力。
  3. 創造的思考(Creative thinking)
    どんな選択肢があるのか、行動の結果がもたらす様々な結果について考えることを可能にし、意思決定と問題解決を助ける。直接経験しないことを考える、アイデアを生み出す力。
  4. 批判的思考(Critical thinking)
    情報や経験を客観的に分析する能力。価値観、集団の圧力、メディアなど、人々の態度や行動に影響する要因を認識し、評価する力。
  5. 効果的コミュニケーション(Effective communication)
    文化や状況に応じた方法で、言語的または非言語的に自分を表現する能力。意見・要望・欲求・恐れの表明やアドバイス・援助を求めることができる。
  6. 対人関係スキル(Interpersonal relationship skills)
    好ましい方法で人と接触・関係の構築・関係の維持・関係の解消をすることができる。
  7. 自己認識(Self-awareness)
    自分自身の性格、長所と短所、欲求などを知ること。
  8. 共感性(Empathy)
    自分が知らない状況に置かれている人の生き方であっても、それを心に描くことができる能力。共感性を持つことで、人々を支え勇気づけることができる。
  9. 情動への対処(Coping with emotions)
    自分や他者の情動を認識し、情動が行動にどのように影響するかを知り、情動に適切に対処する能力。
  10. ストレス・コントロール(Coping with stress)
    生活上のストレッサーを認識し、ストレスの影響を知り、ストレスレベルをコントロールする。ストレッサーに適切に対処し、リラックスすることができる。



選択肢の解説


『②ソシオメトリー』

ソシオメトリーは、モレノによって開発された人間関係の科学及び測定法です。
人間関係や集団構造を、成員間の牽引や反発の頻度や強度などによって量的に測定しようとする理論や技術を指します。

児童生徒の心身の発達を促進させる、学級全体で行うことができる、といった条件には当てはまらないと考えることができます。
よって、選択肢②は開発的カウンセリングの技法として不適切と言えます。



『③チームティーチング』

ティーム・ティーチングとは、複数の教員が役割を分担し、協力し合いながら指導計画を立て、指導する方式のことです。
チームの教員一人ひとりの特性を最大限に生かした体制であり、単に同じ場所に複数の教員が配置されているということではありません。それぞれの教員が分担する役割をしっかりと果たすことで成り立つ指導形態です。

チームティーチングは、カウンセリングの枠組みではなく、教員間の教育方式に関する用語と言えます。
よって、選択肢③は開発的カウンセリングの技法として不適切と言えます。



『①ピアカウンセリング』

児童生徒の社会的スキルを段階的に育て、児童生徒同士が互いに支えあう関係を作るためのプログラムです。
(生徒指導提要より)

また「教師カウンセラー 教育に活かすカウンセリングの理論と実践」によると、開発的カウンセリングとして「ピアカウンセリング」「アサーショントレーニング」「SST」が挙げられております

ただし上記書籍(P149~P150)には、開発的カウンセリングの働きかけの窓口は以下の3つあるとされています。
  1. 個人:従来のカウンセリング
  2. グループ:ピアカウンセリング
  3. 学級全体:SSTや構成的エンカウンター(アサーショントレーニングも含まれます)など
上記によると、従来は「1.個人」と「3.学級全体」への働きかけが中心でしたが、「2.グループ」はその両者をつなぐものとして機能するとしています。

このように「ピアカウンセリング」も教育現場における開発的カウンセリングとして挙げることができますが、以下の点で問題があると思われます。
  • ピアカウンセラーになるには専門的研修が必要になる(カウンセリング辞典)。
  • 文部科学省が示している開発的カウンセリングでは「全ての児童生徒を対象」としているため、上記のようにグループという枠組みで行われるとされるピアカウンセリングが該当しない可能性がある。
  • 「ピアカウンセリング」という行為が、問題文にある「技法」として捉えてよいか疑問がある。

以上から、選択肢①は不適切とまでは言えないまでも、選択肢④および⑤と比較すると除外することになると思われます。
ただし、学校でのピアサポートの活動は、いじめ問題や災害支援などで広がりを見せており、「学級全体」として扱ってよいという考えもあるかと思います。
しかし、現時点では選択肢④及び⑤を排除する明確な論拠を示すことが難しかったので、こちらを除外した次第です。



『④アサーショントレーニング』

アサーショントレーニングは、「主張訓練」と訳される対人場面で自分の伝えたいことをしっかり伝えるためのトレーニングです。
「断る」「要求する」といった葛藤場面での自己表現や、「ほめる」「感謝する」「うれしい気持ちを表す」「援助を申し出る」といった他者とのかかわりをより円滑にする社会的行動の獲得を目指します。
(生徒指導提要より)

これらの内容は、文部科学省が示している「効果的コミュニケーション」や「対人関係スキル」等とも関連すると思われます。

また「教師カウンセラー 教育に活かすカウンセリングの理論と実践」の中でも、開発的カウンセリングとして構成的エンカウンターが、そして構成的エンカウンターの中にはアサーショントレーニングがある旨が記載されています。

よって、選択肢④は適切と判断できます。



『⑤ソーシャルスキルトレーニング〈SST〉』

様々な社会的技能をトレーニングにより、育てる方法です。
「相手を理解する」「自分の思いや考えを適切に伝える」「人間関係を円滑にする」「問題を解決する」「集団行動に参加する」などがトレーニングの目標となります。 
(生徒指導提要より)

これらの内容は、上記に記載のあった「効果的コミュニケーション」や「対人関係スキル」等とも関連すると思われます。

また「開発的カウンセリングは、児童生徒の心理的な発達を促進し、社会生活で必要なライフスキルを育て、困難な問題に対処する力やストレス耐性を高める活動である」という定義も合致すると思われます。

以上より、選択肢⑤は開発的カウンセリングの技法として適切といえます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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