公認心理師 2018-42

2018年10月04日木曜日

言語の障害に関する設問です。

基本的な内容を問うていますが、言語心理学、精神疾患、脳・神経など、幅広い分野にわたっている問題となっています。
ブループリントのやり残しが無いようにしておかないといけませんね。




解答のポイント

脳・神経領域、精神疾患領域、言語心理学領域などについて幅広く学んでいること。



選択肢の解説


『①感覚性失語は多くの場合Broca野の損傷が原因となる』

感覚性失語はウェルニッケ失語とも呼ばれ、左半球側頭葉にあるウェルニッケ野の損傷によって生じるとされています。
  • 言葉の意味を理解することができない。聞いても意味がわからない。言葉を発すること、発音も正しいが使い方に誤りがある。
  • 発話は流暢だが、さまざまな種類の錯誤や新造語を含み、ジャルゴン(音の誤りがあまりにも多く、目標語が推定できない)となることもある。
  • 発症初期には、話し出すと止まらなくなる症状(発話衝迫、語漏)が見られることもある。

対して、表出性失語はブローカ失語とも呼ばれ、大脳の左前頭葉にあるブローカ野の損傷によって生じるとされています。
  • 単語を正しく発音できない、ゆっくりたどたどしく話す、意味は分かるが重要語しか出てこない。
  • 典型例では、発話量が減少し、表出される句の長さが短くなる。構音は歪みや置換が生じ、発話開始の困難や発話速度の低下、アクセントやイントネーションの平板化、不自然な音の途切れがある。
  • 名詞は通常単数形で表現され、形容詞・副詞・冠詞・接続詞は省略されがち。

以上より、選択肢①の内容はブローカとウェルニッケがごっちゃになっており、不適切であると言えます。


『②ディスレクシアは音声言語の理解と産出の障害である』

ディスレクシアは、学習障害(限局性学習症)の一種で、知的能力及び一般的な理解能力などに特に異常がないにもかかわらず、文字の読み書き学習に著しい困難を抱える障害とされています。
学習障害という概念が登場する以前から、英語圏では知能が低くないにもかかわらず、主として読みの能力に困難を示す「ディスレクシア」の存在が知られていました。

「音声言語の理解と産出」については、上記で示したウェルニッケ野とブローカ野の損傷が当てはまると思われます。
ウェルニッケ野の損傷によって言語の意味を理解することが困難になり、ブローカ野の損傷によって一般に自発的発話の算出が困難になります

以上より、選択肢②の内容は不適切と言えます。


『③吃音は幼児期に始まる傾向にあり、女児よりも男児に多い』

DSM-5における「吃音症」の診断基準としては以下の通りです。
  • 会話の正常な流暢性と時間的構成における困難、その人の年齢や言語技能に不相応で、長期間にわたって続き、以下の1つ(またはそれ以上)のことがしばしば明らかに起こることによって特徴づけられる(細かい基準は省略します)。
  • その障害は、話すことの不安、または効果的なコミュニケーション、社会参加、学業的または職業的遂行能力の制限のどれか1つ、またはその複数の組み合わせを引き起こす。
  • 症状の始まりは発達期早期である[注:遅発性の症例は成人期発症流暢症と診断される]
  • その障害は、言語運動または感覚器の欠陥、神経損傷(例:脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷「に関連する非流暢性、または他の医学的疾患によるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されない

小児期発症流暢症の場合は、罹患者の80~90%が6歳までに発症し、発症年齢の範囲は2~7歳です。

全体的に男性のほうが女性の5倍以上多いとされていますが、その原因は不明です。
吃音については、わかっていない点も多く、原因や決定的な治療法も明確になっていません。
以上より、選択肢③は適切といえます。


『④自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉では統合論的な能力のつまずきをもつことが多い』

まずは記号論について把握していることが重要です。
こちらについては以前の記事でも書いていますので、それを抜き出しつつ。

哲学者モリスの記号論を示しています。
ある物体や事柄を表すのに、それそのものを使わずに他の表現に託した場合、その表現にあたるものを「記号」と呼びます(記号の代表として「ことば」がある)。

記号論研究は、以下の三つに分かれます。
  • 意味論:記号の意味(記号と外部との関係)について研究する立場を指し、統語論と対立する。
  • 統語論:記号と記号との関係を論じる(語・句・文・テクストといった記号列(文字列)の構成について論じる)立場
  • 語用論:記号とその使用者との関係を扱う立場。言語の辞書的・文法的説明では決定できない使用規則などを研究する

上記の3つについては、具体例を示して説明します。
例えば「私はバスケットボールです」という言葉があります。
  • 意味論:その言葉が意味として適切か否か
    人間がバスケットボールであることは有り得ないので、この立場からすれば上記の文章は誤りとなる。
  • 統語論:文法的に適切か否か
    上記の文章は文法的には誤りはないとされる。
  • 語用論:状況もひっくるめて考えよう
    普通だったら奇妙な上記の文章も、スポーツ用品店で「お探し物はなんでしょう?」と問われた場面であれば間違いではない。

上記を踏まえ、ASDの問題について取り組んでいきます。
語用論に関わるコミュニケーションの障害はASD児にとって、日常生活を送るうえでの深刻な問題となることが知られています。

語用論とは「具体的な場面において発話が如何にして意味を持つのかということ」であり、発話の理解には発話の意味だけでなく,その発話がどのような意図や文脈(コンテクスト)でなされたかを理解することが重要となります。
ASDで認められるコミュニケーションの障害は、この語用論の障害に起因しているということが指摘されております。

ただし、単に語用論の問題というだけではASDにはならず、「社会的(語用論的)コミュニケーション症」の可能性があります。

選択肢④にある「統語論」は文法的に適切か否かを問うもので、ASDではこちらは問題がない場合が多く、むしろそれを状況に合わせて活用する「語用論」の面の問題が大きいとされています
よって、選択肢④は不適切と判断できます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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