公認心理師 2018-20(解説に誤りがあります)

2018年10月02日火曜日

ここの解説には誤りがあります。
改めて正しい解説を別記事として作成します。


対象喪失に伴う悲嘆反応に対する心理支援に関する設問です。

いくつかの書籍を参考にしつつ解説を書いていきます。
主なものは以下の通りです。

「グリーフケア 死別による悲嘆の援助」

「グリーフケア入門 悲嘆のさなかにある人を支える」




解答のポイント

ウォーデンのグリーフカウンセリングのガイドラインを把握している。
病的悲嘆・複雑性悲嘆の概念を把握していること。



選択肢の解説


『①悲嘆を悪化させないためには、喪失した対象を断念することを勧める』

悲嘆の回復期には、喪失を乗り越えて、新たな自分、新たな社会関係を築いて行くことになります。
悲しみの感情が出現しても喪失期のような強さを伴わず、それらの症状で身動きが取れなくなるようなことも徐々になくなります。

故人の記憶が薄れていく、あるいは喪失感が消えるというよりも、むしろ故人との新たな関係性が見出され、次第に快い懐かしさと優しさの気持ちで故人が思い出されるとされています。

もちろん、悲嘆の回復プロセスやその長短は個別性が強いので、必ず上記のような回復期になるか、そこに至るかはわかりません。
しかし、選択肢①にある「対象を断念する」というのは、悲嘆の回復の観点から言って誤りと言えます。

この選択肢に迷いが生じるとしたらフロイトの喪のプロセスがあるかと思います。
フロイトは、喪のプロセスを、無に帰した対象への自らの拘束を非常に緩慢に一歩一歩解除するプロセスと捉えています。
これはすなわち、対象を断念するということです。

これに対し、弟子のアブラハムは「愛する人を失ったショックは、喪失対象を無意識的に「取り入れる」という過程によって和らげられる」としました。
これは上記の回復期の視点の源流と思われます。



『②理不尽な喪失体験に遭遇したときは、現実検討ではなく気分の転換を優先する』

選択肢にある「理不尽な喪失体験」に該当するものとして、自殺や犯罪被害、テロなどによって生じる悲嘆であると考えられます。
遺体が見つからないという状況もあり得ますね。

理不尽な喪失体験は「複雑性悲嘆」を生じさせやすいとされており、この選択肢は、おそらく「複雑性悲嘆」に関することを問うているのだと考えられます。

シアーは死別をトラウマの形態であり、アタッチメント対象からの分利であると捉えて「複雑性悲嘆療法」を提唱しています。
これでは、対人関係療法の枠組みと感情に焦点づけられた戦略に、非適応的信念と行動とを取り扱うための認知行動療法を取り入れ、人生の目標に取り組み、治療への関わりを増すためのモチベーションを与えるという面接技法です。

こちらでは「非適応的信念と行動」とあり、現実検討に関連したところに焦点を当てているのがわかります。

また上記以外にも、様々なグリーフカウンセリングの技法があるが、いずれも治療者側が「気分の転換を優先する」といった方向づけるやり方は取っておらず、また「気分の転換を優先する」ことの価値について示されてもいません

以上より、選択肢②は誤りと言えます。



『③喪失した対象に対する悲嘆過程を共に体験し、その意味を共に探ることが目標である』

ウォーデンは、グリーフカウンセリングを行う場合のガイドラインを以下のように示しています。
  1. 喪失が現実に起こったことと認識するのを援助する。
  2. 遺された人が自らの感情を確認し、味わうのを援助する。
  3. 「故人がいない世界」で生きることを援助する。
  4. 喪失体験の意味を見出す援助をする
  5. 故人の情緒的な位置付けのやり直しを促進する。
  6. 悲嘆の営みに時を与える。
  7. 「普通の」悲嘆行動について説明する。
  8. 悲嘆には個人差があることを考慮する。
  9. 防衛とコーピングスタイルを検討する。
  10. 病的悲嘆を見出し、より詳しい専門家に紹介する。
上記の4に「喪失体験の意味を見出す援助をする」があり、これは選択肢の内容と合致します
よって、選択肢③の内容が正しいと言えます。



『④悲嘆が病的な反応へと陥らないように、健康な自我の働きを支えることが目標である』

リンデマンは死別に対する正常な反応を、パークスは死別反応の中でもより複雑で重篤で慢性化した病的悲嘆の状態にスポットライトを当てています。

通常、死別の直後に感じるような激しい喪失体験が、一周忌を超えて遷延している場合、「病的な悲嘆」もしくは「複雑性悲嘆」とよばれ、心理学的・精神医学的援助の対象とするのが一般的です。
(近年では「複雑性悲嘆」という表現の方が使われているように思えます)

様々な要因から喪のプロセスの営みに失敗した時、この状態に陥るとされています。
関連する要因としては以下のものが挙げられます(ウォーデン、2008)。
  • 亡くなったのは誰か:続柄、年齢など。
  • 愛着の性質:強さ、安定性、アンビバレンス、軋轢・葛藤、依存的関係。
  • どのように亡くなったか:場所と距離、予期の有無、暴力、防ぐことができた場合、不確実な死
  • パーソナリティに関する変数:年齢と性別、コーピングスタイル、愛着スタイル、認知スタイル、自我の強さ
  • 社会的変数:情緒的、社会的サポートの利用可能性、サポートへの満足、社会的役割への関与、宗教的資源など。
  • 連鎖的ストレス
こうした病的悲嘆・複雑性悲嘆に対してできることとしては、早期発見し予防につなげることがあります。
上記のように、多くの要因が絡み合い生じる現象であるため、選択肢④にある「健康な自我の働きを支える」ということのみで支援が可能とは言い難い考えられます。

よって、早期発見し予防につなげること、必要ならば医療に速やかにつなげることが求められます
特にうつ症状が見られる場合、「悲嘆の波」があるなどの特徴を押さえておくことも重要です。

以上より、選択肢④は誤りであると言えます。



『⑤悲嘆反応の中で出てくる喪失した対象への罪悪感は、病的悪化の要因になりやすいため、心理的支援の中で扱うことは避ける』

死別後の悲嘆のプロセスで出現する「怒り」と「罪悪感」は、遺族に大きな苦痛と混乱を生じさせるものであり、死別後に非常に高頻度で出現するとされています。

これらの感情はうまく処理されないと、ほかの病気の発症や不適応行動の増加のほか、慢性的にネガティブな価値観に支配され、遺族のQOLを低下させる恐れがあるので、正しい理解と援助を心得ておくことが重要です。

どんなに後悔のない看取りだったとしても「あの時〜していれば」「私だけが生き残った」という罪悪感を持ちます。
特に、自分が少しでも死の状況に関与していれば、いわゆる「サイバーズギルト」が生じることが多いです。

罪悪感は内省し、感情を抑圧する方向に向かいやすいとされています。
特に注意すべきは、自分を責めて自殺行動を引き出す点です。

対処では、まず遺族自身が自分の中にある罪悪感の感情に気づくこと、それが正常な死別の反応であると理解すること、人は誰も完璧ではなく、過ちを犯すこともあるという正しい見方を受け入れること、信頼できる人にその気持ちを聞いてもらうことが重要とされています。

以上のように、選択肢⑤の内容は誤りと言えます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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