公認心理師 2018-38

2018年09月30日日曜日

いじめ防止対策推進法(以下、法)の内容に関する設問です。
2011年に起こった大津市中2いじめ自殺事件が2012年になって発覚して、大きく取り上げられたことが契機となりました。
2013年6月28日に与野党の議員立法によって国会で可決成立し、同年9月28日に施行されています。


法律の成立や大きな改定には、たいてい社会的に大きく報じられた事件・事故などがきっかけとなっています。
少年法やDV防止法などもそうですね。

教育、司法は基本的に惰性の強い(社会の変化に即応しない)システムです。
それが基本なので、後手に回る感が生じてしまうのでしょうね。



解答のポイント

いじめ防止対策推進法について把握していること。
「懲戒」と「出席停止」の違いを知っていると解きやすい。



選択肢の解説


『①「児童等」とは、学校に在籍する児童又は生徒をいう』

法の第2条に各名称に関する定義がなされています。
(どの法律でも、第2条に定義が定められていることが多いですね)

「この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう」

「2 この法律において「学校」とは、学校教育法第一条に規定する小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校(幼稚部を除く)をいう」

「3 この法律において「児童等」とは、学校に在籍する児童又は生徒をいう

「4 この法律において「保護者」とは、親権を行う者(親権を行う者のないときは、未成年後見人)をいう」

以上のように、選択肢の内容は適切といえ、除外することができます。


『②「児童等はいじめを行ってはならない」と定められている』

この内容は法第4条に「いじめの禁止」として明確に記されています。
児童等は、いじめを行ってはならない

いじめの禁止について、誰に対して禁止するものであるかについては、立法過程で議論がありました。
具体的には、禁止の名宛人に教員を含めるのかという点です。

結果として、教員等によるいじめの放置や助長については、あえて法律に規定はしないという結論とし、教員の責務に関する付帯決議(いじめ防止対策推進法案に対する附帯決議(平成25年6月19日 衆議院文部科学委員会))が付されることになりました。
「教職員はいじめを受けた児童等を徹底して守り通す責務を有するものとして、いじめに係る研修の実施等により資質の向上を図ること」

以上のように、選択肢②は適切であり、除外することができます。


『③国及び学校には、それぞれ基本的な方針を策定する義務がある』

まず「基本的な方針」とは、法第11条に記載があります。
「文部科学大臣は、関係行政機関の長と連携協力して、いじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針(以下「いじめ防止基本方針」)を定めるものとする
すなわち、第11条に国の策定義務については示されていることになります

そして、その方針の事項は以下の通りです(法第11条第2項第1号~第3号)。
  1. いじめの防止等のための対策の基本的な方向に関する事項
  2. いじめの防止等のための対策の内容に関する事項
  3. その他いじめの防止等のための対策に関する重要事項

また法第13条には学校の策定義務が示されており、以下の通りです。
「学校は、いじめ防止基本方針又は地方いじめ防止基本方針を参酌し、その学校の実情に応じ、当該学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針を定めるものとする

第11条、第13条の末尾にある「定めるものとする」というのは、義務を有しているということになりますね。
それに対し、地方公共団体については以下の通り「努力義務」となっています(法第12条)。
「地方公共団体は、いじめ防止基本方針を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体におけるいじめの防止等のための対策を総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針を定めるよう努めるものとする

よって、選択肢③は正しいといえ、除外できます。


『④いじめを早期に発見するため、学校では在籍児童等に対して定期的な調査を実施するなど適切な対策をとる』

これは法第16条の「いじめの早期発見のための措置」で示されています。
学校の設置者及びその設置する学校は、当該学校におけるいじめを早期に発見するため、当該学校に在籍する児童等に対する定期的な調査その他の必要な措置を講ずるものとする

同条第2項以下にはそれ以外の措置が示されています。

  • 国及び地方公共団体は、いじめに関する通報及び相談を受け付けるための体制の整備に必要な施策を講ずるものとする
  • 学校の設置者及びその設置する学校は、当該学校に在籍する児童等及びその保護者並びに当該学校の教職員がいじめに係る相談を行うことができる体制を整備するものとする。
  • 学校の設置者及びその設置する学校は、相談体制を整備するに当たっては、家庭、地域社会等との連携の下、いじめを受けた児童等の教育を受ける権利その他の権利利益が擁護されるよう配慮するものとする。

以上のように、選択肢④は正しいと言え、除外することができます。


『⑤教育委員会は、児童等がいじめを行っていて教育上必要がある場合は、当該児童等に対して懲戒を加えることができる』


この内容は法第25条の「校長及び教員による懲戒」に示されています。
校長及び教員は、当該学校に在籍する児童等がいじめを行っている場合であって教育上必要があると認めるときは、学校教育法第十一条の規定に基づき、適切に、当該児童等に対して懲戒を加えるものとする

ちなみに学校教育法第11条は以下の通りです。
「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない」

ちなみに、この「懲戒」がどういったことを指すのかについては、文部科学省が示しております。
「体罰」と「懲戒」の線引きを中心に行っているという印象ですね。

この選択肢がややこしいのは、法第26条に記載されている「出席停止制度の適切な運用等」のためです。
市町村の教育委員会は、いじめを行った児童等の保護者に対して学校教育法第三十五条第一項(同法第四十九条において準用する場合を含む)の規定に基づき当該児童等の出席停止を命ずる等、いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにするために必要な措置を速やかに講ずるものとする」

この出席停止制度は「本人への懲戒」と考えるのではありません
学校の秩序を維持し、他の児童生徒の義務教育を受ける権利を保障するという観点から設けられているので、「懲戒」とごっちゃにしないことが重要になります。

「出席停止」は学校全体を考慮した措置ということで、教育委員会が行うことになっているという形だと思われます。

以上のように、選択肢⑤の内容は誤り(教育委員会→校長及び教員)なので、こちらを選択することが求められます。

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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