公認心理師 2018-31

2018年09月24日月曜日

生後6か月までの乳児が示す発達的特徴に関する設問です。
不適切なものを選ぶ問題ですね。

個人的には子育ての経験で解きました。
理論上知っていても、やはり実体験は論より強しです。
しかし、正常発達か否か、正常発達であっても凸凹がある場合、を踏まえると、やはりきちんと把握しておくことが大切だと思います。



解答のポイント

乳児の発達的特徴を把握していること。



選択肢の解説


『①対面する他者の視線方向を目で追う傾向がある』

こちらは、他者の注意の所在を理解しその対象に対する他者の態度を共有することや、自分の注意の所在を他者に理解させその対象に対する自分の態度を他者に共有してもらう行動、すなわち「共同注意」に関する理解を問うています。
ヒトにおいて、狭義の共同注意に関する行動はだいたい生後9か月頃から出現すると言われています

具体的な行動として、大人がいる時に乳児が見てほしいものを指さす(指さし行動)、大人がある対象物を見てそれを乳児も見る(視線追従)、乳児がある対象に対する評価を大人の表情などを見ることで参考にする(社会的参照)などがあります。

このように視線追従については、9か月くらいから、もっと前の研究では、乳児が視線を追うようになるのは12ヶ月以降であり、さらに頭の動きがなく視線のみとなると18ヶ月以降とも言われてきました。
しかし、乳児の注意の発達過程において、生後3ヶ月よりも幼い乳児は、一旦固視してしまったところから目を離せないことが明らかになっています。

このことを踏まえた実験が行われています。
実験では生後3か月児を対象に、目の前の大人の顔の視線が左右どちらかに向いたあと、その顔が消えると同時にターゲットを提示しました。
一方、視線を向いた顔が消えないでターゲットがどちらかに現れる映像も使われました。

その結果、後者の条件でターゲットを見たのは26%で、残りの61%は視線とは反対方向を見たエラーではなく、タイムアウトでした。
しかし、前者の条件では87%という割合でターゲットのほうを見ました(そして残りはすべてエラーで、タイムアウトはなかった)。

つまり、顔の魅力が勝っているために、視線を追うことができなかったと考えられるわけです。
この研究の結果は、3か月の子どもであっても目の前の大人の視線を追うことが可能であることを示しています。
そしてEntremont(2000)によっても、普通に頭の動きを伴った視線の移動に対して、3ヶ月児がその視線の先を追うことが明らかにされています。

その後の研究の積み重ねでも、乳児が他者の視線を追えるようになるのは現在では3ヶ月ごろであると考えられています。
そして、いわゆる三項関係の感受性が現れるのも、そのくらいの時期であると明らかにされています。

以上より、選択肢①の内容は正しいので、除外できます。


(こちらの解説は2019/7/6に修正しています。修正前の解説を一応残しておきます)
これはいわゆる「追視」についてを問うている選択肢ですね。

生まれたての時期は視力が低い上に視界も狭く、目から30cm前後のごく狭い範囲にしか焦点を合わせられない状態です。
生後1ヶ月~2ヶ月頃になると、頭を左右に振ることは難しいものの首周りの筋肉がつき始め、視力や視界も向上するため、目から30cmくらいの位置で物をゆっくり動かすと、目で追おうとするしぐさを見せます。

一般には大体16週くらいからゆっくり動く物体をよく追視するようになります
こちらに記載がありました)



『②目鼻口が正しい配置にある顔図形を選好する傾向がある』

これはいわゆる「顔検出能力」に関する選択肢ですね。

生後数時間以内に、母親の顔、目、声への反応が見られるようになります。
顔検出能力自体は、顔の描かれた図形を選択的に長く注視(選好注視)することが知られています。

例えば、こちらの論文などに記載があります。
よって、選択肢②の内容は正しいので、除外できます。



『③他児の泣き声を聞くと、つられるように泣き出すことがある』

こちらは、つられ泣き、もらい泣きについてですね。

うちの子は一時期NICUにいましたが、そこでは一人が泣き出すと全体がつられるということが生じていました。
産婦人科などでも見られる光景かもしれないですね。

新生児はかなり早い段階から、音の聞き分け、はできています
そしてこの聞き分けは、人の声に向かって生じています
つまり、自分の声と人の声の弁別ができているということですね。

つられ泣きの現象は、育児の世界の解釈で「赤ちゃんに備わっている共感能力」によるものとされることが多いように見受けられます。
その適否はともかくとして、選択肢③の内容は正しいので除外することができます。



『④曖昧な状況で養育者の表情を見てからその後の行動を開始するようになる』

まず表情を読み取れるのは、生後6カ月頃からとされています。
これは無表情(いわゆる「停止顔)を怖がることが知られています。
(臨床心理士の資格試験でも一度この問題は出題されています)

そして生後10か月ごろになると、人の行動や状況の意味も分かってきます
そのころには、大人の行動パターンに合わせて、自分の行動を決めるということも生じるようになります。

以上のように、選択肢④はちょっとしたひっかけになっています。
表情を読み取るのは6カ月頃ですが、その後の行動を開始するという点については10カ月を超えてからということです。
よって、選択肢④の内容は誤りであり、こちらを選択することが求められます。



『⑤目の前で舌を出す動作を繰り返し見せると、同じような顔の動きをすることがある』

新生児期からみられるという原初的模倣では、相手の舌出しや口の開閉、表情などを見つけた後、同一行動が出現するとされています。
これらの行動に意図は伴わないが、注視やタイミングから見て、単なる反射と考えることは難しいとされています。

上記のようなことを繰り返すことで、情動及び関心の共有体験を重ね、自分も周囲の大人も同じものであるという感覚に気づき始めます。
自分も相手も「同じもの」であるという感覚が定着することによって、相手のしぐさを自分もなぞって模倣するということが生じます。
こうして生じる模倣は、新生児に見られるものよりも社会的な意味を帯びやすいものといえます(だいたい10カ月前後から生じる)。

よって、選択肢⑤の内容は適切であり、除外することができます。

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4 件のコメント

  1. 選択肢①は、対面している人が見ている方向を見るということではないですか?共同注視は7〜8ヶ月ごろからと言われますよね?

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    1. コメントありがとうございます。
      本当ですね…。
      対面している人の話(共同注視)なのに、追視の説明をしていました。

      ご指摘ありがとうございます。
      修正させていただきます。

      またお気づきの点などございましたら、コメント頂けると幸いです。

      削除
  2. 早速ありがとうございます。来月の試験に向けて、とてもありがたく勉強させていただいています。
    この問題、わたしは①を選択してしまいました。共同注視は6ヶ月ごろまでにできるんですね。勉強し直します。

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    返信
    1. こちらこそご指摘いただき、ありがとうございます。
      実は昨日の段階の解説では不十分、というか間違いでしたので再修正を行いました。
      「3か月くらいには可能になる」というのを正式な解説とさせてください。

      近年の研究まで踏まえている必要があるようで、その辺が大変です。
      古い教科書では対応できないようで。

      それでは、よろしくお願い致します。

      削除

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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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