公認心理師 2018-22

2018年09月20日木曜日

ある説明を提示し、それに合致する概念を選ぶ問題です。
今回の公認心理師試験では少ないタイプの設問形式だったかなと思います。

設問にあるのは「自分の特定の行動を成功裏に遂行できるという感覚や信念を表す用語」です。
これと合致するものを選びましょう。



解答のポイント

選択肢で示されている各概念について把握していること。


選択肢の解説


『①自己効力』

こちらについてはバンデューラの概念です。
以前、詳しく述べていますのでご参考ください。
「自己効力」とする場合も、「自己効力感」とする場合も散見され、ここでは両者を同じものとして扱っていきます。
(テキストによって上記の表現の違いはありますが、説明は同じでした。調べる限り)

改めてまとめますと、観察学習を発端としたバンデューラの社会的学習理論は、その後さらに発展し、「自己効力(感)」の概念を生むことになりました。

こちらは、伝統的な学習理論に対し、観察学習を含む多様な人間の学習形態を統一的に理解するために、認知的な媒介概念として発案されました。

バンデューラによると、自己効力(感)は、期待であり、予期であるが、従来の学習理論で言われていた結果の予期(トールマン)ではなく、反応に対する予期(「できる」という予期)であるとして、自己効力感の特色を強調しました。

以上の点より、「自分の特定の行動を成功裏に遂行できるという感覚や信念」という説明は、自己効力感の特色を示したものと捉えて相違ないと思われます。
よって、選択肢①が最も適切と言えます。

なお、効力予期と結果予期の関係は以下の通りです。



上記の効力予期の重要性をバンデューラは指摘しており、それを以下の4つに分けています。
  1. 遂行行動の達成:いわゆる成功体験のこと。バンデューラがもっとも重視した。
  2. 代理的経験:誰かが達成するところを見ること。モデリング。
  3. 言語的説得:誰かに励まされるなど。特に1についてだと良いとされる。
  4. 情動的喚起:情動的・生理的な解釈によって高まるとされる。


『②自己調整』

この用語については、いくつかの概念が考えられるので、浮かぶものをまとめていきます。
  1. 自己制御:
    カンファーやバンデューラらは、自己の内的な要因が行動に与える影響を重視し、自己制御という概念を提出しました。

    この概念に基づくと、人は自己の行動をモニターし、その内容と自己のもつ何らかの基準(要求水準など)とを比較して行動を評価し、その結果に応じて自己の行動を統制するとされます。

    この概念では、環境要因に大きく依存せず、自己のもつ内的基準が行動の生起を決定するという考え方になっています
  2. 自己調整学習:
    これは1990年代からアメリカの教育心理学者、ジマーマンらが中心となって提案している新しい教育心理学の理論体系です。

    自己調整学習理論では、勉強ができるようになるのは、生得的なの「頭の良さ」や「教育環境」によってではなく、学習者自身が自分の持っている能力を発揮するために自発的に行なうプロセスに拠る面が大きいと考えます。

    学習者自身の主体的で自立的な取り組みを学習のキーとして捉え、その実態や指導案を明らかにしようとするのが「自己調整学習」の理論です。
  3. 自己制御法(セルフ・コントロール):
    思考、感情、運動、態度、更にはかつて随意的な制御が困難であると考えられていた自律神経系支配の諸活動など、行動の全ての側面について自己の意思で随意的に制御することや、その手段を実践することを指します。

    古典的条件づけで変容すると思われていた自律神経系活動が、オペラント条件づけの手続きによっても変容し得ることが確認されて以来、脳波や筋電図などの指標を随意的に制御することに限定して用いられることもあります。
以上より、いずれも設問の内容とは合致しないので、選択肢②は不適切と言えます。


『③自尊感情』

これは、自己に対する評価感情を指し、自分自身を基本的に価値あるものとしてみなす感覚のことです。

自尊感情は、常に意識されているわけではありませんが、その人の言動や意識態度を基本的に方向づけるものです。
自分自身の存在を基本的に価値あるものと評価し信頼することによって、人は積極的に意欲的に経験を積み重ね、満足感を持ち、自己に対しても他者に対しても受容的になることができます。
以上より、選択肢③の内容は説明と合致せず、不適切と言えます。


『④コンピテンス』

こちらについては多様な使われ方をしています。

言語心理学や認知心理学では、実際の行動や成績に対して、潜在的能力を指して使われることが多いです。
チョムスキーは、言語運用者の内部にある言語能力をコンピテンスと呼びました。

発達心理学でのコンピテンスとは、環境に対する適応能力をさす概念として使用されます。
人の潜在的能力と、環境に能動的に働きかけて自らの「有能さ」を追求しようとする動機づけを一体として捉える力動的な概念を指します。

心理職におけるコンピテンシーでは、特定の専門家が、適切で効果的なやり方で業務を行う資格を持ち、その専門職の倫理観・価値観に沿ったやり方で、適切な判断、批判的思考、そして意思決定ができることを指します。

環境に対して自分の持っている能力がその環境条件で効果的に問題を解決するだろうというように、自己能力の効果を予期する側面を持っているため、ホワイトによれば、コンピテンスは、自己効力感の側面を含みこむものであるとされている。

以上のように、やや自己効力感と重なる面はありつつも、設問の内容と完全には一致していませんので、選択肢④を最も適切とすることはできなさそうです。


『⑤ポジティブ感情』

特に精神医学などは、人間のネガティブな側面、病的な側面に注意を向けがちだったが、それとは対照的にポジティブ感情や「強み」に焦点を当てたのが、ポジティブ心理学です。

このポジティブ心理学の研究領域の中でも、研究が集中的に行われている領域の一つがポジティブ感情です。
ポジティブ心理学によると、ポジティブな感情は思考の柔軟性や適切な問題解決の意志決定をもたらし、全般的にプラスの効果があると解釈されています。

一方、自己中心的なポジティブ感情はマイナスになることも示されるなど、ポジティブ感情の偏り(ポジティブ幻想など)についての検証も必要です。
ポジティブ感情自体は、笑いや楽観主義、自尊感情などとも関連するとされています。

上記より、選択肢⑤の内容は設問と合致するとは言えず、不適切と言えます。
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About Me

小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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