公認心理師 2018-118

2018年09月15日土曜日

こちらは原因帰属に関する問題です。
以前にも記事にしました、ワイナーの原因帰属理論を元にした問題です。

選択肢③と選択肢④のいずれが適切かの根拠を見つけられずにおりましたが、コメントにて適切な情報をいただきました。
それをもとに修正させていただきました。



解答のポイント

Rotter&Weinerの原因帰属理論を理解していること。
行動コストと効力予期の視点を持って解くことができる。


原因帰属理論の概説

上記のリンクにほぼ書いてありますが、概要を記します。
この理論では、原因帰属のスタイルを「統制」と「安定性」で分類します。

統制は以下の2つに分かれます。

  • 内的統制:その人の内部の要因。性格、気質、能力など。
  • 外的統制:外部要因。環境によるものなど。

安定性は以下の2つに分かれます。
  • 安定:変わりにくい要因のことを指す。知能や課題の困難さなど。
  • 不安定:変わりやすい要因のことを指す。努力や運など。


これらを組み合わせると以下のような表になります。


安定


不安定


内的統制


先天的な能力が原因


努力が原因


外的統制


課題の困難度が原因


運が原因



ワイナーは1979年に、これらに「統制可能-統制不可能」という因子を加えた理論を示しました。


内的統制

外的統制

安定

不安定
安定
不安定

統制
不可能

能力
気分
課題の困難さ

統制
可能

不断の努力
一次的な努力
教師の偏見
他者からの日常的でない援助

ここで示されている「統制可能-統制不可能」は、自分にとってコントロール可能か否かという次元です。
ワイナーは、どのような原因帰属を行うかによって、後の行動に対する成功の期待や感情が決まり、次の行動が決定されると考えました。

帰属先によって達成動機の高低が変わってくるとされています。
  • 達成動機が高い人:
    成功の原因を能力や努力に帰属させ、失敗の原因を運や努力不足に帰属させる傾向が強いといわれています。
    自尊心が満たされ、努力すれば成功できるという成功期待も高い状態です。
  • 達成動機が低い人:
    成功の原因を課題の難易や運に帰属させ、失敗の原因を能力に帰属させる傾向が強いといわれています。
    失敗の原因を能力に帰属させると「何をしてもムダだ」というあきらめの気持ちが強くなり、達成動機が低下します。


選択肢の解説

本設問で示されている状況は、すべて「試験の点数が悪かった」という場合です。
よって、状況が悪いときにどこに帰属させているかがポイントになります。

その上で「効果的な学習者の解釈」すなわち、達成動機が高く、次の課題にも積極的に取り組めるような原因帰属をしている選択肢を選ぶことが求められています


『①試験の点数が悪かったのは苦手な科目があるからだ』

こちらの内容は、明らかに「苦手な教科」の存在(=それが苦手な自らの能力)という内的・安定・統制不可能な原因帰属です。

すなわち、自らに備わっている特性は変えようがなく、学習者本人にはコントロールできない要因に帰属しているため、次への意欲・期待が高まることはないと判断できます。
よって、選択肢①の内容は不適切と言えます。


『②試験の点数が悪かったのは問題が難しかったからだ』

こちらは、「課題の困難さ」という外的・安定・統制不可能な原因帰属です。

すなわち、課題の困難さは学習者が変えることはできず、当然コントロールもできないため、次への意欲・期待が高まることはないと判断できます。
よって、選択肢②の内容は不適切と言えます。


『③試験の点数が悪かったのは努力が足りなかったからだ』

この内容は、内的・不安定・統制可能な原因帰属になります。

よって、達成動機が高い人の傾向(失敗を努力不足と捉える)があり、次はもっと頑張って勉強すれば、良い点数が採れるだろうと期待が持てます

しかし、「統制可能-統制不可能」という分類で言うと、努力が「不断の努力」と「一時的な努力」のいずれかであるという限定は本設問ではなされていません

よって、選択肢③は効果的な学習者の解釈として適切と言えなくもありませんが、選択肢④と比べてどうでしょうか。


『④試験の点数が悪かったのは学習方法に問題があったからだ』

こちらについては選択肢③同様、内的(自分の勉強方法だから、外的な要因ではない)、不安定(勉強方法は不変のものでない)、統制可能(勉強方法は変えようと思えば変えられる)と捉えることが可能です。

そうなると、選択肢④も達成動機が高い人の原因帰属と考えられます。
選択肢③と④のいずれの方が効果的な学習者と定めることができるかが重要です。

コメントで紹介いただいた「やる気はどこから来るのか」(奈須正裕,2002)にこの点が示されておりました。
これによると、以下の2点が重要となります。

1点目は「行動コスト」という考え方です。
得られる価値の高さに照らして、支払う労力や心理的負担が大きすぎる場合、行動しない可能性が高いということです。

今回の結果で言うと、選択肢③の努力という帰属は、それをずっとし続けることが求められるという意味で大きな労力を求められます。
それに対して、選択肢④でしたら方法論の見直しということですから、努力量については据え置きで大丈夫といえます。

2点目は「効力期待」です。
こちらはバンデューラの示した概念で、以前詳しく述べております(公認心理師試験の問22でも同様の記述をしてあります)。

バンデューラによると、自己効力(感)は、期待であり、予期であるが、従来の学習理論で言われていた結果の予期(トールマン)ではなく、反応に対する予期(「できる」という予期)であるとして、自己効力感の特色を強調しました

すなわち、失敗を努力に帰属すると随伴性期待(やれば成功する)は高いかもしれませんが、そこで要求される「毎日のコツコツ」を当人がやれそうと思うかどうか(効力予期)が重要と言えます。

選択肢③の「努力」とするよりも選択肢④の「勉強方法」と帰属する方が、ワイナーの「一時的な努力」に該当すると言え、こちらの方が効力予期が高くなると考えられます。

以上の点から、選択肢④がより効果的な学習者の解釈と捉えることが可能であり、こちらが最も適切な選択肢と言えます。

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11 件のコメント

  1. 解説、納得いくものが多く、大変感謝しております。

    ところで、ひとつ、118は原因帰属ではなく、クロンバックの適正処遇交互作用の理論を使って、学習方法4が答えではないでしょうか?
    私も努力不足と解答したのですが、内的帰属はモチベーションの維持に役立つという説明が多く、「効果的」という説明はあまり出てこないもので。宜しければご検討下さい。

    産後鬱や、SCに助言を求めてきた教師の問題の解説も楽しみにしております。

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    1. コメントありがとうございます。

      以下でも書きましたが、適正処遇交互作用は「現在では、教育場面において、どのような適性の学習者にはどのような教授方法が最適かという、個人差に応じた教育環境を研究・設計するための基本的概念」となっています。
      https://www.public-psychologist.systems/2018/08/ati.html

      学習者が「点数が悪かったのは教え方が悪かったからだ」と解釈することが効果的になるという結論を、適正処遇交互作用理論にて導けるかが課題ですね。

      ポイントは問118では、学習者自身が「教え方が悪かったから」と解釈する点にあるような気がします。
      適正処遇交互作用は、学習者が解釈するというよりも、もっと客観的な視点から評価・判断をしている概念だと考えております。

      選択肢③を選ばれたのですね。
      私も同じですが、どうも選択肢④っぽい気がしています。
      ③だとラッキーかなという気持ちでいます。

      産後鬱は問152、SCに助言を求めてきた教師は問69のことかなと思います。
      いずれも意見が割れているものですね。
      自分の選んだ答えは脇に除けつつ、考えていきますね。

      ご意見頂けて良かったです。
      ありがとうございました。

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  2. 118は学習者がどう解釈しているかである、というのは確かにその通りですね。しかも、努力が足りなかったというのは、妙に自責的で、感覚的には今後伸びなさそうな気がするんですよね、ありがとうございました。

    2問は、はい、その通りです。また宜しくお願いします。試験前にこのサイトを知っていれば良かったです。周りでも好評です。どの問題も出題者が貴方様と同じ感覚の方なら良いのですが。

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    1. お返事ありがとうございます。

      >努力が足りなかったというのは、妙に自責的で、感覚的には今後伸びなさそう
      おっしゃる通りだと思います。
      全く同様の指摘を先日受け、その知見を「追記」として載せてあります。
      日本の努力至上主義が問題で、努力帰属をしても「努力の仕方がわからない」、すなわち学習方法がわからないとよろしくないという考えです。

      その論点で言えば正答は④ということになりますが、それでも選択肢④の学習者が「具体的に学習方法のこういう点を修正しよう」ということを理解しているという記載もなく、そのまま当てはめることが可能か否かは怪しいところです。

      いずれにせよ正答を導くのは、なかなか骨が折れる問題です。

      >試験前にこのサイトを知っていれば
      ありがとうございます。
      そのように言ってもらえて光栄です。

      臨床心理士資格試験は長年教えてきましたが、公認心理師の方がずっと難しかったですね。
      理論や概念のかなり細かいところ、新しい知見まで読み込まないと解けないような問題が多く、難渋しました。

      お話にありました2問は私自身も気になっているので、ちょっと時間をかけて考えてみます。
      ありがとうございました。

      削除
  3. 問118④について。教育心理学者、奈須正裕さんの理論から。奈須さんは、原因帰属から、発生する「感情、期待、行動」の流れをモデル化して、「客観的な結果に対する主観的な原因の認知が期待と感情を経由して先々の行動への意欲や実際の行動選択を左右する」と原因帰属の考え方を定義し、さらに、ワイナーの「統制可能、内的、不安定」要因を「一時的な努力、方法、策略」としていて、これを見直す人が次回も頑張ろうと意欲を保てる。これは植木理恵さんの『本当にわかる心理学』から引いてきてます。論文など見つからないのですが、いくつか文献も紹介されてます。
    学習方法を間違えたと考えたら、何か工夫しようと向上心につながると書かれ、私も大変納得。
    先生になんとか、分析していてもらいたいと書き込みました。宜しくお願いします。

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    1. コメントありがとうございます。

      明確な根拠になりそうな情報、ありがとうございます!
      手持ちの資料ではなかなか手が回らず、どうしたものかなと思っておりました。

      >「客観的な結果に対する主観的な原因の認知が期待と感情を経由して先々の行動への意欲や実際の行動選択を左右する」
      奈須先生のご著書の中で、この定義が載っている本は特定できたので届き次第じっくり読んでみます。

      >植木理恵さん
      ほんまでっか、の方ですね。
      教育心理学がご専門だったような気がしますね。

      >学習方法を間違えたと考えたら、何か工夫しようと向上心につながると書かれ、私も大変納得。
      本当にそうですよね。
      私も試験しながら、「そりゃそうだろうけど、その根拠となる理論は知らないんだよ~」と③にマークしました。
      素朴理論的に考えても良かったかもしれないですね。

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    2. お世話になります。
      以前コメントいただいた中でご紹介いただいた書籍を確認しました。

      それを受けて、選択肢を明確に絞り込むことができましたので、ご報告します。
      記事の内容を修正しましたので、ご確認くださいませ。

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    3. 有り難うございます。
      同じく植木理恵著『やる気を育てる!』にも、奈須さんが紹介されてます。「いったい、何を悔いたらやる気かわくのか」とし、「理論的に努力が一番だが…すでに努力している人に努力が足りないというのは…理論的に最も悪い『能力』へと失敗理由を求めるようになる」「『自分はよほどダメな人間なんだ』と思い込むかも、とし、方法を変えようとする姿勢が…『今度は結果出すぞ!』と明るい気持ちにつながりやすい…」「実際に新しい方法が本当にうまくいくかどうかはさほど重要でない」とも。

      今回の公認心理師試験なら…どなたもその人なりの全力投球をしているはずです。まだ(努力が)足りないという解釈は、今後の学習効果を高めるのに適切とは思えないかと。
      子育て中のママさん達へ臨床心理士として話す際、植木さんの心理学本を使わせてもらっていて…試験後の復習中、思い出してよかったです。
      ④正解でなきゃ、やる気が出ません(笑)

      分析、今か今かと待っておりました。感謝しております。

      削除
    4. お返事ありがとうございます。
      こちらこそご助言頂けたおかげで、私自身納得した形で終えることができました。
      感謝いたします。

      >まだ(努力が)足りないという解釈は、今後の学習効果を高めるのに適切とは思えないかと。
      その通りだと思います。
      特に今回のような傾向が読めない試験の場合、「努力」に帰属したとしても、「何を努力してよいのか」がわからないため霧の中に迷い込むような感覚にもなり得ると思います。

      >植木さんの心理学本
      私個人は中井先生、神田橋先生、成田先生など、精神科医の先生のご著書を読むことが多く、心理学者の本については不勉強だったので助かりました。

      またお気づきの点などございましたら、ご指摘いただけると幸いです。
      宜しくお願い致します。

      削除
  4. 素直に③のワイナー帰属理論か、
    新学習指導要領の考える力の育成に関係した
    ④教訓帰納と学習成果の関係か・・
    迷いつつ、④を選択しました。進学塾の先生なら、賛成してくれそうですが、自信はありません。

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    1. コメントありがとうございます。

      従来の理論なら③ですが、どうも④を支持する知見もあるような話がちらちら聞こえてきます。
      この知見が明示できたら④に確定ですね。

      いま、その資料を待っているところです。

      教訓帰納、学ぶごとにそこから何を学んだのかという教訓を取りだすことですね。
      自身を俯瞰して眺めることができる、ということも背景にありそうです。

      自分に置き換えても④かな、と思いますが、やはり試験なので明確な根拠をもって確定させたいと考えております。
      こちらについては、近いうちに追加・修正を行うと思います。

      削除

About Me

小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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