合理的配慮のまとめ

2018年08月29日水曜日

各省庁の障害者法定雇用の問題が出ていますね。
数字目標だけが独り歩きしているような状況なのかもしれないですね。

さて、タイトルにもありますが合理的配慮についてです。
いくつかの法律に渡っているのでわかりにくいところがあります。
自分なりにまとめてみようと思います。


合理的配慮については、障害者基本法がいわゆる「基本法」です。
それに準じて「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」の中でも条項が定められています。

まとめると以下の通りです。


◎障害者権利条約 第2条

「「合理的配慮」とは障害のある人が他の人同様の人権と基本的自由を享受できるように、物事の本質を変えてしまったり、多大な負担を強いたりしない限りにおいて、配慮や調整を行うことである」

ポイントは2点で、
①障害者が他の人と同じように社会で生きることができるようにすること
②そのための配慮が度を超えていたり、する側の負担が大きすぎないことが重要
…ということです。

この定義については、以下の法律でも同様と捉えて良さそうです。
ちなみに他の法律で「合理的配慮」について明確な定義を示している箇所はありません。


◎障害者基本法 第4条第2項

「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない

要点は、2006年に国連総会で採択された障害者権利条約の批准に向けた部分。

①障害者の定義の拡大:いわゆる3障害(知的、身体、精神)に加え、「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」が追加され、性同一性障害などが含まれるようになっている。

合理的配慮概念の導入:上記の部分。これを受け障害者差別解消法の中でも、「合理的配慮」の実施について示されるようになった。

障害者基本法では「合理的配慮をしなくていはいけませんよ」という大枠を定めており、細かい部分については以下の法律になってくる。


◎障害者差別解消法 第7条第2項

「行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない

ここで重要なのが「合理的配慮をしなければならない」と「法的義務」が定められているのが「行政機関等」であることです。

つまり、国や地方自治体などは合理的配慮を行う義務があるということになります。
次の条項との違いを理解しておきましょう。


◎障害者差別解消法 第8条第2項

「事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない

この記載は合理的配慮が「努力義務」であることを示しています。

「努力義務」の対象は「事業者」です。
日本の国税法令等での「事業者」とは、個人事業者(個人事業主・事業を行う個人)と法人や団体を指します。

ここを「努力義務」にしている理由としては以下の通りです。

「教育、医療、公共交通、行政の活動など、幅広い分野を対象とする法律ですが、障害のある方と行政機関や事業者などとの関わり方は具体的な場面によって様々であり、それによって、求められる配慮も多種多様です」

「このため、この法律では、合理的配慮に関しては、一律に義務とするのではなく、行政機関などには率先した取組を行うべき主体として義務を課す一方で、民間事業者に関しては努力義務を課した上で、対応指針によって自主的な取組を促すこととしています
(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答〈国民向け〉)

これらの違いが明確に現れるのが、国立大学と私立大学などですね。
前者では法的義務が、後者だと努力義務となります。

ですが、これは教育機関としては、ほぼ法的義務と言ってよいものです。
この法律では、民間事業者によって繰り返し障害のある方の権利利益の侵害に当たるような差別が行われ、自主的な改善が期待できない場合などには、その民間事業者の事業を担当する大臣が、民間事業者に対し、報告を求めたり、助言・指導、勧告を行うといった行政措置を行うことができることにしています。

ちなみに「会社では合理的配慮は努力義務なのか?」と問われるとそうではありません。
次に示す障害者雇用促進法で示されています。


◎障害者雇用促進法 第36条2

「事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となつている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」

記載にあるとおり、「必要な措置を講じなければならない」としている以上、労働者として障害者を雇う場合には「法的義務」が生じます

ちなみに職場における合理的配慮の例としては、以下のようなものがあります(厚生労働省の「合理的配慮サーチ」より)。
  • 業務指示・連絡に際して、筆談やメール等を利用する
  • 机の高さを調節すること等作業を可能にする工夫を行う
  • 感覚過敏を緩和するためのサングラスの着用や耳栓の使用、体温調整しやすい服装の着用を認める等の対応を行う
  • 本人の負担の程度に応じ、業務量等を調整する
  • 本人のプライバシーに配慮した上で、他の職員に対し、障害の内容や必要な配慮等を説明する


◎その他のポイント

「障害者差別解消法」では、国の行政機関や地方公共団体、民間事業者などを対象にしており、一般人が個人的な関係で障害のある方と接するような場合や、個人の思想、言論といったものは対象にしていません

また、重要なのが各法律で共通して「障害者自身からの申し出」という文言を入れているところです。
「申し出なければしなくて良い」というわけではなく、障害者と合理的配慮を提供する側の相互のやり取りをもって、その内容は定められるべきという前提があるのでしょうね。

法定雇用率については、以下のようになっています。
・民間企業:2.2%
・国、地方自治体:2.5%
・都道府県等の教育委員会:2.4%
平成33年4月の前に、更に0.1%ずつの引き上げの予定だそうです。

教育機関での合理的配慮の例としては以下のようになります。
  • 聴覚過敏の児童生徒のために机・いすの脚に緩衝材をつけて雑音を軽減する
  • 視覚情報の処理が苦手な児童生徒のために黒板周りの掲示物の情報量を減らす
  • 支援員等の教室への入室や授業・試験でのパソコン入力支援、移動支援、待合室での待機を許可する
  • 意思疎通のために絵や写真カード、ICT機器(タブレット端末等)を活用する
  • 入学試験において、別室受験、時間延長、読み上げ機能等の使用を許可する
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小学校~大学までの教育領域で臨床活動をしています。また10年以上、臨床心理士資格試験対策の勉強会に携わってきました。
このブログでは公認心理師および臨床心理士の資格試験に向けた内容をアップしていきます。時々、コラムや読書録なども。

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